SDGsのプロジェクトに参加して

最近、よく目や耳にするSDGsという言葉。元の言葉はSustainable Development Goalsで、直訳すると『持続可能な開発目標』となります。環境問題を始め、経済やジェンダーの問題など、様々な問題を世界の国々が協力し合って解決していこうとする取り組みで、2030年までの達成を目標に、17の項目が挙げられています。日本でも、先進国のひとつとしてSDGs達成に向けた取り組みが、様々な分野で急ピッチで行われています。

ある日、SDGs達成に向けたプロジェクトの第一回目の企画として、モビールを作りたいというお話しをいただきました。最初はSDGsとモビール?と不思議に思いましたが、プロジェクトリーダーの方から話を聞くと、共通する部分があることが分かってきました。企業などで大量に廃棄される紙を再生紙に変えて、新たなプロダクトに生まれ変わらせるプロジェクトで、その紙製品としてモビールを選んでいただいたのです。電力を使わず、自然の風だけを動力として回るところや、回転することで循環をイメージさせるところ、それにモチーフ同士がバランスを取りながら支え合っているところなど、モビール自体がSDGsのいくつかのテーマを表現していました。前回お伝えしたような障害を持つ方々との協働についても知っていただき、製造の部分においてもSDGsの一つのテーマを含んでいるようでした。

SDGsの17番目の目標が『パートナーシップで目標を達成しよう』というもので、他企業との『協働』は重要なテーマの一つです。今回お話しをいただいたプロジェクトも、古紙を回収して再生紙にする工程を大阪の製紙会社さんが担当し、そこでできあがった再生紙を使ってモビールを作るという流れでした。モビールのデザインは一から描き起こし、SDGsの大きなテーマである協調や博愛、生き物との共生や環境についてもイメージしながら、デザイナーと一緒に作っていきました。

再生紙で作ったモビール。デザインは多様性や協調を意識しました
再生紙で作ったモビール。デザインは多様性や協調を意識しました

今回、再生紙ということで色がついたものはなく、どうやって色をつけるかにとても悩みました。最初は両面にベタ塗りの印刷をして、そのあとにカットするという話をしていましたが、コストも高くなる上にあまりにも非効率的です。作業工程が多くなるということは、それだけエネルギーを使うということなので、SDGsの理念にも反してしまうのです。そこで、色のないまま試作品を作ることにしました。古紙からリサイクルした再生紙の色はグレーに近く、以前の紙のつぶつぶしたものが残っています。

再生紙が作られる様子。リサイクルされた古紙を溶解処理して、再生紙へと作り変えます
再生紙が作られる様子。リサイクルされた古紙を溶解処理して、再生紙へと作り変えます

シート状のときは気づかなかったのですが、モビールにしてみると、まるで石で作ったような雰囲気になりました。白い紙は見慣れているのですが、グレーがかった再生紙でモビールを作ったことがなかったので、とても新鮮な感覚でした。これは、もうこのまま色がなくて良いかもしれないと思いました。そこでプロジェクトリーダーの方と相談し、今回は色をつけずに再生紙の素材のままでモビールを作ることにしました。
できあがったモビールは、クラウドファンディングなどを利用して、プロジェクトに賛同してくれた企業や個人の元へ届けていただくのですが、そこで絵の具や色鉛筆で着色してもらえれば、より一つひとつのテーマも意識してもらえると思ったのです。それに何より再生紙の素材のままで作ったモビールは、無理に色をつけなくてもそれだけで美しいものでした。環境という視点を一つ付け加えると、作り方が変わることや、省ける工程があることは自分にとって大きな学びとなりました。

完成したモビールはご家庭や企業へ届けられました。色鉛筆などで着色もできます。
完成したモビールはご家庭や企業へ届けられました。色鉛筆などで着色もできます。

クラウドファンディングも無事、目標金額に達し、たくさんの皆様の元へモビールを届けていただきました。SDGsと聞くと、国が主導の大きな活動と思ってしまいがちでしたが、このプロジェクトをきっかけに改めて意識してみると、見えてくることがありました。製品やパッケージなどにまだまだ環境への配慮ができる余地があるなぁと身近なこととして捉えられたり、環境問題に関する本を読むきっかけにもなりました。こうやって他社や他者との小さな協働から、少しずつ気づいていくことの積み重ねで、改善していけることがあると思います。まだまだ勉強中ですが、今後もSDGsすなわち持続可能な活動を意識して、ものづくりを続けていきたいと思います。

 


 

今回参加させていただいたプロジェクトの内容は、以下のウェブサイトで詳しくご紹介していただいております。よろしければ、ぜひご覧ください。

エシクルfor SDGs:http://www.esycl.jp/