展覧会を終えて

先日、部屋を片付けていたら、一冊のノートが出てきました。『感想ノート』と黒のマジックで書かれたそれは、大昔に知り合いのカフェで展覧会をさせていただいた時のものでした。懐かしさに浸って、パラパラとめくりながら『そういえば、久しくこういう展示会をしていないなぁ』とふと思いました。その後、プロダクトをどう流通させるかに四苦八苦しているうちに、随分と月日が経ってしまっていたようです。

大昔にカフェで展示した際の感想ノートと展示風景

 

本当に不思議なことですが、このノートを見つけてすぐに、企画会社さんから展覧会のお声がけをいただきました。ノートの持つ不思議な力が、呼び寄せてしまったのかもしれません。名古屋でアミューズメント施設を運営する企業が、ミュージアムも運営しており、そこでモビール展を開催することになったのです。かつては、タレントのビートたけし氏や、アーティストのヤノベケンジ氏も展示されたことのあるミュージアムで、展示の規模としては過去最大のものになります。ただモビールを飾るだけでなく、これまでの軌跡が伝わるような展示にできたら良いなぁとすぐに思いました。お声がけいただいてから開催まで、一ヶ月もなかったので、間に入っていただいている企画会社さんと共同で、急いで内容を考えていきました。

製品のモビールの展示はもちろん、未公開の特注で製作したモビールや、前回お伝えしたようなパッケージの歴史、製作には障がいを持つ方に関わっていただいてることなど、普段お見せできない裏側のこともパネルを交えてお伝えできたらと思いました。最も苦心したのは、プロダクトと展示をどう両立させるかということでした。商品である製品と、展示に求められる作品性は、通常異なるものです。製品を集めた展覧会というのは異例であって、どうやって作る側も観る側も納得できる形に落とし込むかというところがポイントでした。

ものを作る上で常に頭に置いていることがあります。これはまた別の回で改めて書きたいと思っていますが、それは「社会」と「文化」のバランスです。メイカーを例にとれば、製品を流通・売買することは「社会」に属し、作ること自体は「文化」に属します。僕の活動にとって重要なのは、この二極が偏らないように良いバランスを保つことなのです。大昔にカフェで展示をした時のように、作品としてのモビールをただ飾るだけでなく、どのようにしてプロダクトが作られているか、どのような歴史を経て今に至っているか、また消費者へどのような形で届けられているかなど、社会的な側面も意識して作り上げていきました。それらが最終的に展覧会という文化的な場にパッケージできていたら、一番良いなぁと思うのです。

今回の展示風景。プロダクトとしてのモビールと、作品性のバランスに気をつけました。

 

タイトルは『Hello!Manu Mobiles WORLDーマニュモビールズの世界展』としました。初めて知っていただいた方も、すでに知っていただいてる方も、どちらも楽しめるような展示にしたいという想いを込めました。ゴールデンウィークから始まり、27日間の長期間、たくさんの方にご来場いただき、ありがとうございました。いろいろ書いてしまいましたが、それらは抜きにして、お越しいただいた皆様、特に子どもたちが単純にモビールを楽しめるような展示になっていたら、一番嬉しいです。

未公開の巨大なモビールや、モビールになる前のラフスケッチも展示