「ハンドくん」誕生秘話

今回のコラムの主役はモビール…ではなく、モビールの糸を上に上にたどっていくと発見する糸巻の部分のお話しです。あまり注目されることの少ない部分ですが、天井でしっかりとモビールを支える重要な役割を果たしています。名前を「ハンドくん」と言って、じつは現在で4代目。今回は彼にまつわるエピソードをお伝えできたらと思います。
 
ハンドくん

今回の主役は、モビールを支える糸巻きの部分。愛称は“ハンドくん”

 
最初にモビールを作ろうと思ったとき、当然吊るすための糸巻きの部分をどうするかを考えました。海外のモビールでは、シンプルなデザインのものが多く、白を基調とした紙製の装飾の少ないものが採用されています。以前もお伝えしましたが、当時の僕はデザイン以外の可能性を模索していました。糸巻の部分も何か別のアプローチで作ることができないかと思ったのです。「モビールと同じように、この部分もキャラクターにしよう」とすぐに思いつきました。その方が愛着が持てるし、天井を見上げたときにニッコリと笑っているキャラクターがいた方が面白いと思ったのです。名前もすぐに浮かびました。手でぶらさがるから「ハンドくん」。マニュモビールズの「マニュ」も「手」という意味なので、ちょうど良いと思いました。
 
ハンドくん

天井にペタッと画鋲やテープなどで留めることもできます。

 
初代のハンドくんは今よりも胴体が長く、手にも指がありました。色もカラフルで、それぞれのモビールごとに色が異なっていました。ただ一つ問題があり、手の部分でフックなどに引っ掛けられるのですが、その腕の部分が細すぎて、折れ曲がったりちぎれてしまったりすることがあったのです。そこで、2代目は腕の部分を太くして作り直しました。これで、密かに〝骨折”と呼んでいた現象は起きなくなりました。ただ、初代も2代目も、モビールと同じように紙を3枚貼り合わせて作っていたのですが、今度はそれが気になってきました。分厚い紙を一枚にすれば、3枚分をカットして、なおかつ手作業で貼る作業を大幅に減らすことができます。コストの面で大きな節約になるのです。また、色のバリエーションも不要と判断しました。天井にもっと馴染むような色を一色にすれば、何色も在庫を持っておく無駄を減らせます。白かクラフトかは最後まで迷いましたが、クロス貼りの部屋にも、木でできた部屋にもどちらにも馴染むように、クラフト感のある方を選びました。こうして3代目のハンドくんが生まれました。
 
ハンドくん

左から初代、2代目、3代目、4代目

 
パッケージの時と同じく、これでもう作り替えなくて良いかなと思っていたのですが、ある日お客様からこのような言葉をいただきました。「ハンドくんが大きすぎて、天井で主張しすぎる」と。それまで全く考えたことがなかったのですが、確かにそう思いました。ハンドくんを可愛がるばかりに本来の目的を見失っていたのです。糸巻の部分は主役ではなく、あくまで主役のモビールを支えるための裏の立役者。言うなれば、“縁の下”ならぬ、”天井の下”の力持ちなのです。もっと小さくて良い、それにもっとシンプルにしよう。その頃からデザインというものを意識するようになりました。

こうしてできあがった4代目ハンドくんは、もうずっと続いています。歴代の中でも一番長く、今のところ改良点も見当たりません。確かに主役ではないのですが、たまに天井を見てあげてください。そこには、ニッコリとほほえむハンドくんが、健気にモビールを支えている姿を発見できると思います。
 
ハンドくん

“縁の下”ならぬ“天井の下”の力持ち。いつも笑顔でモビールを支えています。