パッケージの変遷

モビールを初めて作った際に、パッケージをどうすべきか、さんざんに悩みました。外見のデザインはもちろんですが、素材やサイズ感、コストとの兼ね合いや、封入作業の効率化など、製品と同じぐらい検討すべきことが多かったのです。なかでも最も苦労したのが、中身の商品をどう保護するかということでした。マニュモビールズのモビールは紙と糸だけで作られているために、とても繊細な商品なのです。小売店の棚に並ぶまでに、商品は段ボールの中で、激しい衝撃に何度も耐えなくてはなりません。棚に並んだあとも、お客さんの手に触れたり、落ちたりすることもあるでしょう。製品を守るパッケージは、そんなたくさんの衝撃に耐えられるようなものでなくてはならないのです。

最初に作ったパッケージは、単純に厚紙に切れ込みが入っており、そこに持ち手の部分の糸をくわえさせているだけの簡素な作りでした。その上から透明の袋に入れてあるだけなので振ればカサカサと中身が動き、最悪の場合、中身が折れてしまう心配もありました。2代目も同様で、この頃はまだ見た目や素材感、かかるコストのことぐらいしか考えられなかったのです。

(奥)初代のパッケージ。まだ作りも粗く、小さめサイズでした。(手前)2代目のパッケージ。レコードサイズで、MDFという木の板を使っていたため、重いのが欠点。
(奥)初代のパッケージ。まだ作りも粗く、小さめサイズでした。
(手前)2代目のパッケージ。レコードサイズで、MDFという木の板を使っていたため、重いのが欠点。

3代目で初めて中身の商品を固定させようと思いました。しかし、これが本当に難問でした。モビールの形をかたどった、よくある透明のプラスチックケースを成形して、両側からモビールを挟み込めば動かなくすることはできるでしょう。でもモビールの種類が何種類もあり、それぞれの形ごとにそのケースを作っていたら、大量生産品でない限り、コストが嵩むばかりです。
たくさんの試行錯誤と失敗を経て、4代目でようやく一つの形を作ることができました。それはナイロンの袋に厚紙とモビールを入れ、機械で空気を抜くという手法です。一点ずつモビールを置いて、機械で空気を抜き、圧着していくので手間はややかかりますが、モビールを傷つけることなく、完全に動かなくすることに成功したのです。この4代目が歴代の中でも、一番長く続いたパッケージです。この辺りから流通することも多くなってきたので、ご存知の方も多いかもしれません。

一番長く続いた4代目のパッケージ。トレーシングペーパーから見える透け感が好評でした。
一番長く続いた4代目のパッケージ。
トレーシングペーパーから見える透け感が好評でした。
4代目で初めて採用したナイロンの袋に入れて空気を抜く手法。これにより、モビールを固定することに成功しました。
4代目で初めて採用したナイロンの袋に入れて空気を抜く手法。
これにより、モビールを固定することに成功しました。

半透明で中身が見える外見のデザインも大変好評だったのですが、もっと様々な面で改善できないかと思い、5代目のパッケージは初めて外部のデザイナーに依頼しました。外見を紙製にして強度とクラフト感を増し、ギフトにも喜んでいただけるようにと以前より豪華で落ち着いた作りにしました。今流通しているものは、ほとんどこの5代目です。お客様には好評だったのですが、お店の方々から「中身が見えるようにして欲しい」「以前のような派手さが欲しい」というご意見を数多くいただいたため、再びリニューアルすることになりました。

初めて外部のデザイナーに依頼した5代目。重厚感が増し、ギフトとして人気でしたが、中身が見えないことと、華やかさに欠けるのが欠点。
初めて外部のデザイナーに依頼した5代目。
重厚感が増し、ギフトとして人気でしたが、中身が見えないことと、華やかさに欠けるのが欠点。

そして、6代目でようやく決定版ともいえるものにたどり着いたと思います。外見のデザインはもちろん、強度、効率性、華やかさ、コスト、厚みや大きさに至るまで全て、自分の中では合格点を出せた決定版です。

ひとつだけ気になっている点があるとすれば、外側を覆うケースを紙製からPP(ポリプロピレン)製に変更したことにより、エコやSDGsに反しているという指摘があるかもしれません。もちろんリサイクルできる素材、赤ちゃんや子どもが触っても支障がないものを使っていますが、より環境に優しい作りのパッケージを目指すには、これからも改良を続けていかなくてはならないでしょう。パッケージとの果てなき戦いは、まだまだこれからも続きそうです。

まだ生まれたばかりの6代目。これまでの問題点を全てクリアした決定版です。これから店頭にも並び始めます。
まだ生まれたばかりの6代目。
これまでの問題点を全てクリアした決定版です。
これから店頭にも並び始めます。