前回まで「高効率低コストの間伐システム」についてお話ししてきましたが、一般的に最もポピュラーな搬出方法は「架線集材システム」です。かつては「馬で引く」方法もあったのですが、さすがに最近ではほとんど見かけなくなりました。
架線集材は一言でいうと「吊って出す」技術です。丸太を数本ずつ束にして、ワイヤーで吊るし、トラックがアプローチできる道路端まで搬出します。途中に他の所有者の森や田畑などの障害物がありますし、間伐では残す方の木がありますから、それらを超える高さまで吊り上げなければなりません。丸太数本といっても数百キロにもなりますから、かなり太くて重いワイヤーを使うことになり、ワイヤーを最初に張る作業だけで数日を要します。森の中に「合自然的な道路」を建設するのは前回までに話しましたが、架線集材ではそもそも道路を建設しません。ワイヤーの価格と張る手間を考えるとコストは高いのですが、より自然に優しいシステムと言えます。また崖のような急傾斜地の森林では道路を建設できませんから、そうした場所ではどうしても必要なシステムです。新たな機械の開発など、コストダウンのためのイノベーションが期待されます。
丸太は一般的に4mにカットするというのは前回お話した通りですが、通常一本の木から4本程度の丸太が採れます。丸太は曲がっていると極端に販売価格が下落しますので、造材する過程で曲がっている部分は切り捨てることになり、よって4本採れるとは限りません。木は根元が太く先は細いですから、丸太も先端に近い切り口の方が根元に近い方の切り口より直径が小さくなります。この小さい方の径に長さを掛けたものがこの丸太の体積(材積)になります。根元がどんなに大きくてもカウントされません。
わざわざ手間をかけて搬出するのですから、販売する木は一定以上の大きさになっています。それでも大小あるうえに曲がり具合もまちまちですから、採れる丸太もさまざま。材積1㎥の丸太を採る為には通常、杉の木3~5本が必要となります。市場では丸太を径級(一定幅の直径)毎に分け、さらに直材、小曲、大曲に分けてそれぞれで「はえ」と呼ばれる山を作ります。大きさと曲がり具合で分けるのですから、一つの「はえ」には多数の所有者の丸太が混在しています。これを「はえ」ごとに競っていき、落札すると所有者に分配します。ちなみに丸太を買うのは製材業者の方々です。
当社では森から丸太を搬出する際に大まかに選別し、出来るだけ提携する製材所や工場に直送していますが、それでもある程度は市場で販売しています。多くの森林経営者の方々は、当社のような作業班を持っていませんから、ほとんどが市場での売却になります。また、一定の大きさ形状の丸太を必要なだけ買い付けたいという製材所にとっては、市場は絶対不可欠です。じつは一時期「市場は不要ではないか」という議論があったのですが、このような理由から必要であるばかりでなく、今後はむしろ伐採現場まで出てきて、市場主導で現場で選別して直送するといった新たな役割を担って欲しいと願っています。
市場で「はえ」ごとに競り売りする場合、各製材所はその「はえ」全体を「1㎥あたりいくらで買うか」という金額を入札します。この1㎥あたりの価格はいくらなのか? (ちなみに、当社では最新=2014年1月の販売価格は約10,000円/㎥でした。 )そしてその価格は過去30年間でどのように推移してきたのか? これから林業の現状を話していく中でお話ししていきます。