利用間伐は道路建設から

(左)作業道と作業路(右)作業路開設

 
40年生前後で行う3回目の間伐作業では、伐った木を森林から搬出して販売します。この作業を行うにあたり、まずは森林内に丸太を搬出するための道路(作業路)を建設することから始まります。
 
管理経営する森林には、国道・県道などの「公道」とは別に、作業用の「私道」が通っています。これは公道から森林の中に入って行く道路で、幅約4~5m、砂利などを敷き込み、10tトラックが通行できるレベルの作業用道路です。この道を林業用の「作業道」と呼んでいます。ちなみに森の中の道路を「林道」と呼びますが、林道は農道・市道などと同等の「公道」で、通常は市町村が所有及び管理しています。作業道はあくまで私道ですから、一定の基準を満たせば補助金などの公的支援を受けることもありますが、森林の所有者個人が建設費や維持費を負担し、管理についての責任も負っています。私たちはこの作業道を既に約30km建設、管理しています。
 
さらにトラックが入る作業道まで木材を運んでくるために、森林内に「作業路」を建設します。これは幅約3mで、極めて合自然的と言いますか、できるだけ森林内の山の傾斜を崩さない、後述するキャタピラ式の機械が動き回れる最低限の道路です。これを1ha当り250~300m程度建設します。作業路建設は得意とするところですが、一日あたりの建設距離は20~30m程度。建設を進めているとコース上に大きな岩が出現することもしばしばで、粉砕するなんてことはせず、その度にコースを変更します。何より自然に優しい、あるままの地形を変えることなく機械が入って行くことを旨としています。

伐採作業は命がけ

いままでのところを整理しますと、まず搬出間伐を行う森林に入り、作業道まで木材を運搬するための作業路の建設計画を立てます。つぎに支障となる立木を伐採し、そこに建設機械(バックホー)を使って作業路を建設します。
 
チェーンソー伐採作業路ができあがると、伐採作業に入ります。この作業はあくまで間伐ですから、森林を健全な状態に保つ、言い換えれば残った木を育てることが目的です。よって作業中に残す方の立木に傷がついては何にもなりません。主にチェーンソーを使って3~5本に1本伐採しますが、立木の間にピンポイントで倒します。プロが伐採するのですから間違った方向に倒れることはほとんどありませんが、ほんの少しの違いで立木と枝と枝が絡み合い、伐った木が立木に引っ掛かってしまうことがあります。ワイヤー等を使って地面まで落とすのですが、枝と枝が絡み合っているだけですから、いつ倒れてくるかわからない危険な作業になります。
 
こうやってなんとか倒した木を、ワイヤーで作業路まで引っ張り出すのですが、残った立木にワイヤーがこすったりすると、立木は商品価値を失いますので神経を使います。引っ張り出た木の枝を払い、丸太の形にして…という作業を「造材」と言いますが、これは次回お話ししましょう。

 

profile

田島信太郎 Shintaro Tajima
田島山業株式会社 代表取締役/大分県林業経営者協会理事/(社)九州経済連合会九州次世代林業研究会委員/日田林業500年を考える会会長 1980年慶応義塾大学法学部卒。西武セゾングループ代表室勤務を経て、1988年、父、祖父の急逝に伴い、家業を継ぎ林業経営者となる。日田林業500年目にあたる1991年、子どもたちを対象とした森林環境教育、また学生、社会人の森林ボランティア受入れを開始。「断固森林を守る」取り組みを続けている。

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