最初の間伐は、植林後20年頃に行います。 同じ場所に同じ種類の苗木を植えても育ち方はさまざまで、育ちの悪い木や曲がって育ってしまった木等を伐採します。森は木々が集まって一つの世界を作っています。森の中に入ると夏は涼しく冬は暖かく感じます。森全体で温度や湿度を保っていて、そこには一種独特な空気が漂っています。森を守るために木を伐るとはいえ、この世界を出来るだけ保ったままにするには、一度に伐る量を減らすしかありません。20本に1本(間伐率5%)程度の伐採を数年に一度やるというのが理想でしょうが、手間がかかって人手が足りません。よって20~30%、つまり3本~5本に1本伐るというのが一般的で、その後約10年毎に間伐を繰り返していきます。(このペースでも大変なんです! )
植林後20年(「20年生」と言います)前後ですと、太さは人間の腕くらい。通常は伐ってそのまま森林内に放置します。つまり捨ててしまいます。こうした間伐を「切り捨て間伐」と言います。「なぜ捨ててしまうのか?」と思われるでしょうが、「手間のかかる搬出作業(後述)のコストに見合うだけの価格で販売できない」からです。20年生前後で1回目の間伐を行った森林の2回目は30年生、3回目は40年生前後ということになります。もちろん、同じ森林内でも木々の成長差があるように、森林全体の向きや地質、高度等により生育が異なりますが、ここでは一般的な例について述べていきます。
30年生前後で行う2回目の間伐、これを「切り捨て間伐」にするか、搬出して販売する「利用間伐」にするか微妙な時期になります。成長の悪い木や曲がった木を伐採するわけですから価値が低いのは当然ですが、成長が良い当地の杉ですから、直径が30センチを超えるものもあります。これを「捨てる」というのは「もったいない」を通り越して「断腸の思い」ですが、搬出して販売したら赤字になるのではどうにもなりません。木材価格が低迷する昨今においては、「2回目も切り捨て」になることが多いと思います。
3回目は40年生前後の杉の木を間伐します。この位になるともう立派な「成木」です。しかも1回目2回目で残った木の中から伐採するわけですから、これはもう断然、搬出して販売します。 じつは中津江村の森林はこの年代の木が最も多く、すなわち「利用間伐適齢期」にあると言えます。従って日々の林業の仕事も、大半はこの年代の森の利用間伐作業となり、それによる収入でなんとか生きているという状況です。
利用間伐は、「成木した大きな木を伐採し、残った木々に傷をつけることなく搬出する」作業です。これには非常に高度な技術を要します。次回からこれを非常に効率よく行う当地自慢のシステムについてお話しすることにしましょう。