オイシイモノ紀行 四国編

小豆島産手摘み緑果搾り春のサラダをつくりましょう。まずはドレッシングです。酢とオイルを合わせます。
 
こうしてドレッシングを前にすると、東京・虎ノ門「ホテルオークラ東京」のキッチンをいつも思い出します。その昔、私は料理本の編集者をしており、小野正吉初代総料理長にお目にかかることになりました。怖いんだよ~と噂の方です。フランス料理のソースについてさまざまに質問します。しかし、戻ってくるのは、ふんふんと唸り声ばかり。数分後、料理長は突然立ち上がって調理台に向かい、無言でドレッシングをつくり始めました。ボールの中でオイルと酢の波がゆったりと渦巻いていきます。緑色がとてもきれいでした。そこで初めて口を開きました。「な、ソースだろ?」。そう、それは、がしゃがしゃ混ぜ合わせた液体ではなく、まさにとろりとしたソースでした。これまで、私、フランス料理の根本はソースです、ドレッシングもソースですと幾度教えられても耳学問でしたが、この時素直に、あ、ソース! と思えました。料理長は、「こいつ、いろいろ聞くけれどわかってないな」と看破なさったのでしょうね。理解不能者に実践で教えてくださったのでした。
 
この後、料理長は「春のサラダ」をつくってくださいました。小さな空豆やアスパラガスなどを取り合わせ、このソースをふわっとまあるくまわしかけ、「な、春だろ?」とおっしゃいました。おお、なんとふっくらとした小野ソース。「ソース! なぜ、このようにおいしいのでしょうかっ?」「オイルだな」。この深みのある味わい香りは、イタリア産のエキストラ・バージンオリーブオイルがつくりだしたものでした。当時、そんな上等品は大ホテルか大レストランにしかありませんでしたから、ほう~これがそのオイルか、オイルは大切と感動したものです。
 
今では世界中のオイルが選り取り見取りですが、我が家で欠かさないのは日本産なんですよ。春ですからちょっと遠出して香川県に向かいます。小豆島産の生搾りオイルです。まだ青い実を手摘みした搾りたてなので、文字通りフレッシュです。さらりとしていて、こくがあって、とてもいい香り。高価ですから、ここ一番というときに使います。ネットか電話のみの注文です。
 
サラダ

■ドレッシングのつくり方(酢1オイル3の割合)
 
① 酢(レモンの搾り汁など)に、塩と胡椒を好きな量入れて混ぜ溶かす。
②エキストラ・バージンオリーブオイルを少しずつ加えながら、混ぜ合わせる。大きく泡立て器を動かすとよい。

井上誠耕園
香川県小豆郡小豆島町池田2352
問い合わせ電話:0120-75-0213
申し込み電話:0120-75-0223
HP:http://www.inoueseikoen.co.jp
大本幸子(おおもと ゆきこ)

愛媛県松山市生まれ。中央公論社16年間勤務。後、編集事務所STUDIO OMT主宰。エディター& ライターとして、料理ジャンルの書籍・雑誌・PR誌制作にかかわる。ペンネーム大本幸之丞。
著作書籍に「おたずね申す、日本一」TBSブリタニカ、「泡盛百年古酒の夢」河出書房新社、「芋焼酎の人びと」世界文化社、「北島亭のフランス料理」日本放送協会、「簡単ではない」日本放送協会、「続簡単ではない」日本放送協会、「簡単だった!」日本放送協会など。「パスタ歳時記 片岡護」講談社 他、編集本など多数。

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