オイシイモノ紀行 四国編

麦味噌

 

四国九州瀬戸内圏は裸麦の生産が盛ん。いきおい味噌にも麦の力が及んで麦味噌が生まれました。と言っても、趣向を凝らした特殊なものではなく、米・大豆系と同じ、麹菌で発酵させてつくる、ごくごく普段使いの仲間です。見た目、米・大豆味噌とたいしてかわりばえしませんが、お味はちょいと違います。ひとすくいなめてみましょう。どうですか? 初めての人は、そろって、不意打ちを食らった猫ちゃんみたいに目がまん丸になります。そして、必ずこうおっしゃいます。「おおっ、おおっ、甘い~~!」「なめらか~。とろ~り~」。そう、温暖地の味噌は寒冷地の塩辛系と対照的に、とても甘くておだやかなんです。しかも当地愛媛県は裸麦生産量日本一ということもあって、昔からどこのお台所でも主流品。しかし、全国での認知度は低いようで残念です。皆様、麦味噌党に入りましょう。新しい世界がひらけますよ。

 

トースト

 

まあま、能書きは脇に置いて、まずはオーソドックスに味噌汁仕立てからご案内。ソフトな口当たりが特徴なので、里芋だとかお餅といったものと組み合わせると、うっとりとろとろ二重奏。木の芽を摺り込んで木の芽味噌。これを豆腐にのせてオーブンで焼けば甘味の田楽。魚を漬け込む、肉を漬け込む。バタートーストに塗ってオーブンで焼けば、うふふの朝食。甘党でなくともこたえられないこと、請け合いです。さて、ここで、なお一層のうまさ倍増テクニックを伝授いたしましょうぞ。昔から言いますね、味噌は合わせるのがコツ。赤味噌とでも信州味噌とでも合わせてみてください。がぜんシャープになってうまみが立ちます。このことを味噌屋さんが見逃すわけもなく、米・大豆味噌との合わせタイプも販売しています。

 

黒は赤味噌 明るい黄色は白味噌 ベージュは麦味噌

黒は赤味噌・ベージュは麦味噌・明るい黄色は白味噌

 

さてさて、近年、昆布だの鰹節だの、日本の素材が欧米でもてはやされる傾向がありますが、麦味噌君も例外にあらず。パリの料理人さんが、「豚肉に麦味噌をのせて焼くとトレビアン」と発言しているのをテレビでみました。確かに、豚肉と甘い味噌の相性は吉。ほらほら、フランスの人もこのテクニックを知ってしまったみたいですよ。そのうちに「パリジェンヌ好みの麦味噌カツサンド」なんてのが名物になっちゃうかな~~~。

 


■麦味噌は、百貨店、大きめのスーパーマーケット、商店で、取り扱っています。

以下、グラン・フジ調べ。※グラン・フジは、松山市内にあるスーパーマーケットです。写真の味噌は、一例です。

伊予のみそ 835g 298円 ギノーみそ㈱
伊予の里 750g 258円 ㈱後藤商店
麦みそ 800g 438円 ㈲地蔵味噌
麦味噌 500g 248円 矢野味噌㈲
大本幸子(おおもと ゆきこ)

愛媛県松山市生まれ。中央公論社16年間勤務。後、編集事務所STUDIO OMT主宰。エディター& ライターとして、料理ジャンルの書籍・雑誌・PR誌制作にかかわる。ペンネーム大本幸之丞。
著作書籍に「おたずね申す、日本一」TBSブリタニカ、「泡盛百年古酒の夢」河出書房新社、「芋焼酎の人びと」世界文化社、「北島亭のフランス料理」日本放送協会、「簡単ではない」日本放送協会、「続簡単ではない」日本放送協会、「簡単だった!」日本放送協会など。「パスタ歳時記 片岡護」講談社 他、編集本など多数。

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