オイシイモノ紀行 四国編

11月ですよ。さあ、近所の産直市に生椎茸を買いに行きましょう。松山市近郊の農家から、畑の露をつけた野菜がトラックでぶぶぶーっと運ばれてきます。採りたての生椎茸も一緒にぶぶぶー。いかにも森からの贈り物といった、分厚くて元気な原木栽培です。椎茸は松茸と異なり高度な栽培技術が行き渡っているので、日本全国市場には栽培ものが流通しています。クヌギやナラの木材に菌を打ちこんで育てる原木栽培と、撒いた菌をベッドにして育てる菌床栽培の2種類があります。どちらが好みかといえば、私は、味・香り・口当たりの点で断然原木派です。
 
原木生椎茸
選ぶなら、お椀をふせたような形。ぼそぼそっと毛が生えたような、厚みのあるまるっこいのを手に取りましょう。裏側のひだひだはしみひとつない真っ白であること。軸がしっかり頑丈なのを。今日買ったのは厚みが2~3センチほどもあって、こういうのは煮ても焼いてもアワビのような歯ごたえがあります。
 
内楽農産直市のおかあさん。
お店番の生産者のおかあさんにおすすめ一番の食べ方をうかがいました。「焼きたて熱々に塩をぱらっとふるかお醤油を少しだけたらすか、もしくは酢醤油」。実にシンプル・イズ・ベストでした。これを熱いご飯にのせると「椎茸丼」。低カロリーで人気です。われらの食膳に並ぶごはんのおかずには? 昔からおなじみの、根菜類と取り合わせる煮物・天ぷら・ひき肉はさみ揚げなどなどなど。椎茸とかき卵のおつゆなんて、香りがよくておいしいですね。イタリアも茸の産地です。パスタ料理に使えないだろうか。使えます。椎茸はバターと仲良しですから、炒めてスパゲッティにからめましょう。うんと大きなサイズなら、塩・胡椒をして丸ごとステーキにする手もあります。ナイフとフォークで食べます。イタリアのオーソドックスな茸の食べ方です。フランス風にはオムレツに刻んで入れますよ。ちなみにフランス語で椎茸はle shiitakeと言います。中国料理から椎茸をはずすことはできません。炒める、煮込む、揚げる、詰めるなんにでも。
 
イタリア式茸食法。
椎茸の季節は今頃から春先まで。秋に出るものを秋子(あきこ)、冬に出るものを冬子(どんこ)、春に出るものを春子(はるこ)と呼びます。日本・中国料理では冬子の乾物を珍重します。
 
使い勝手がよく各国料理のよきお供ですが、食べすぎると皮膚にかゆみが出たり炎症をおこすことがあるといわれています。ほどほどにお願いしますね。そうそう、この原木椎茸を太陽に干して乾燥させると、とびっきりの干し椎茸になります。
 

原木生椎茸こぶし大5個前後で250円
内楽農企業組合新鮮野菜産地直送市場
大野印照堂 松山市木屋町1-4-10
営 業:火木土のみ開催 10:00~15:00
大本幸子(おおもと ゆきこ)

愛媛県松山市生まれ。中央公論社16年間勤務。後、編集事務所STUDIO OMT主宰。エディター& ライターとして、料理ジャンルの書籍・雑誌・PR誌制作にかかわる。ペンネーム大本幸之丞。
著作書籍に「おたずね申す、日本一」TBSブリタニカ、「泡盛百年古酒の夢」河出書房新社、「芋焼酎の人びと」世界文化社、「北島亭のフランス料理」日本放送協会、「簡単ではない」日本放送協会、「続簡単ではない」日本放送協会、「簡単だった!」日本放送協会など。「パスタ歳時記 片岡護」講談社 他、編集本など多数。

バックナンバー