オイシイモノ紀行 四国編

我が家雑煮の材料一覧。牛肉、焼き豆腐、牛蒡、人参、大根、里芋、水菜、切昆布。年が明ければ、なにはさておきお雑煮です。我が家は関西圏ですからゆでた丸餅です。具は、牛肉、焼き豆腐、牛蒡、人参、里芋、大根、水菜、切昆布の組み合わせで、お澄まし仕立てです。
 
簡単に作り方をご披露しますね。①ささがき牛蒡にせん切り人参を重ね、酒、いりこ(煮干し)と昆布でとった出し、塩少々の砂糖味で煮ます。牛蒡に半ば火が通ったら、さらに薄切り牛肉、薄切り焼き豆腐をミルクレープのように重ねて、淡口しょうゆとみりんを下味程度に加えて煮ます。②大根と里芋は薄切りにしてゆでます。③丸餅をゆでます。④吸い物味に仕立てた出しを用意。⑤お椀の底に大根と里芋を敷き、餅をのせ、具のミルクレープをのせ、水菜、昆布をあしらいます。お澄ましの出しをはります。香りの柚子皮をふって、完了。肉の脂の甘みがこくっと行き渡って年の初めのおご馳走。瀬戸内のお城下なのに魚を使いません。
 
餅は丸餅。お雑煮にはゆでて使います。
松山のオーソドックスなお雑煮はというと。典型の決定打はないらしいのですが、司馬遼太郎著『坂の上の雲』の主人公秋山好古家のお雑煮が、生家近くで営業の割烹店「桃李花」で再現されていて評判です。どれどれ。行ってみましょう。びっくり! 材料が我が家のものとほぼ同じ。違うのは具の牛肉が鯛の切り身であること、出しが鯛のあらからとったもので白味噌仕立てであることの2点だけ。
魚と肉を入れ替えれば、そっくり重なります。この組み合わせが松山一般のお雑煮のベースかもしれません。
 
牛肉スタイルの始まりは祖父の代からと聞いています。はたと気がつきました。明治3年生まれの祖父は若いころからキリスト教徒であったので、アメリカ人宣教師さんたちと交流がありました。その影響があってのことでしょう、魚をビーフに、味噌スープをジャパニーズコンソメに替えて、宣教師さんたちとお正月をお祝いしたらしいのです。年の初めのお雑煮に、我が家のこんな歴史が埋まっていました。楽しい発見でした。
 
桃李花
 

大本幸子(おおもと ゆきこ)

愛媛県松山市生まれ。中央公論社16年間勤務。後、編集事務所STUDIO OMT主宰。エディター& ライターとして、料理ジャンルの書籍・雑誌・PR誌制作にかかわる。ペンネーム大本幸之丞。
著作書籍に「おたずね申す、日本一」TBSブリタニカ、「泡盛百年古酒の夢」河出書房新社、「芋焼酎の人びと」世界文化社、「北島亭のフランス料理」日本放送協会、「簡単ではない」日本放送協会、「続簡単ではない」日本放送協会、「簡単だった!」日本放送協会など。「パスタ歳時記 片岡護」講談社 他、編集本など多数。

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