オイシイモノ紀行 四国編


 厳寒期の売り場は、鯛をはじめ、ほご、はぎ、あなごにあこうなどなど。瀬戸内自慢魚のそうざらえ。赤、ピンク、黄色に茶色と彩豊かです。中でひときわ輝くのが太刀魚です。あの、ぎんぎん光った刀の刃のように長い魚。あら? 太刀魚は確か夏の魚では・・と疑問符の方もいらっしゃるでしょうね。でも、瀬戸内では冬にこそおすすめなんです。魚屋さんのお父さん激賞。「食べてみて! ここらじゃ冬においしいんよ!」
 
 冷たい海水に身を太らせ、脂肪を抱えてむっちりもっちり。ぺらんぺらんじゃありません。頭のあたりの身なんて、もう、厚さ4センチくらい。長さだって1メートルを超すものがざら。試しに手に取ってみましょう。両手で持ってもどんと重くて・・。
 
 これを、塩焼きにでもして召し上がってごらんなさいまし。金色に焼けた皮をやぶると、ほら、とろり、ふわり、甘さがひろがって、う~~む、唸り声しかでませんですよ。これぞ瀬戸内の宝。ご所望とあらば一本長いままでお持ち帰りいただけます。ともかく新鮮ですから刺身OK、握りの種OK。1メートル1本もので本日価格は1500円。ただし、不漁のこともありますから、日によって変わります。(地方送り・取り寄せ可)。
 
 魚料理の名手イタリア人も太刀魚が大好物だそうで、知り合いの料理人さんがオリョウリシマショウと、焼いてくれました。塩をふってハーブをふってオリーブオイルをたらりとかけて炭火焼。それがなんと一匹丸ごと長いままだったのでびっくり。ナンデ驚くの? せっかくの丸ごとをわざわざカットするなんてヘンと不思議なお顔。ただ、長い焼き床がなくて、焼き鳥屋さんのコンロを拝借したんですって。お国ぶりって面白いですね。
 

安東鮮魚店
愛媛県松山市平和通6-4-2
TEL.089-931-3967(呼)
休み 日・祭・祝日
大本幸子(おおもと ゆきこ)

愛媛県松山市生まれ。中央公論社16年間勤務。後、編集事務所STUDIO OMT主宰。エディター& ライターとして、料理ジャンルの書籍・雑誌・PR誌制作にかかわる。ペンネーム大本幸之丞。
著作書籍に「おたずね申す、日本一」TBSブリタニカ、「泡盛百年古酒の夢」河出書房新社、「芋焼酎の人びと」世界文化社、「北島亭のフランス料理」日本放送協会、「簡単ではない」日本放送協会、「続簡単ではない」日本放送協会、「簡単だった!」日本放送協会など。「パスタ歳時記 片岡護」講談社 他、編集本など多数。

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