モザイクには、硬くて小さく加工出来る素材ならば何でも使えます。例えば角砂糖やチョコで作ればきっとスイーツモザイク。宝石や純金で作ったモザイクだって存在します。
そんな中で、ローマ時代から今日まで広くモザイクに使われ続けている素材が、大理石、ズマルト、オーロ、貝殻、小石...などなど。加工が比較的容易で、耐久性がある素材たちです。今日はこれらの素材についてご紹介します。
1.大理石
主に、床モザイクに使われる、大理石。イタリア語ではMarmo(マルモ)と言います。大理石の魅力は何といっても、自然が生み出す色の美しさ。白、黒、赤、黄色、緑、グレイ...特に「割れたて」は、瑞々しい!初めて空気に触れる小さな結晶が微かにキラキラと光って、思わず見蕩れます。
また、石によって割れ方、硬さ、質感、全て違います。例えば白系マットな大理石は素直だけど、模様が入っている石は頑固なものが多い、とか。緑は硬いものが多く、黒は割れると硫黄のにおい。ギュッと引き締まっているものもあれば、ぼろぼろと崩れるようなゆるいものも。同じ大理石の種類でも、採掘地が違うとやはり割れ方は変わります。

伝統的なモザイク用の工具で割ります。




教室ではヴェネツィア産ズマルトをメインに使っています。
2.ズマルト
モザイク用のガラス素材、Smalto(ズマルト)。今でもヴェネツィア本島内で、職人の手で作られています。教会の壁や天井モザイクに使われる事が多い素材で、大理石にはないビビッドな色と質感が魅力です。

厚いガラスの上に金箔を乗せ、
その上に薄いガラスでコートしています。
銀もあります。
3.オーロ
VOro(オーロ=金)は、金箔をガラスで挟んだもの。ズマルトと同じく現在も職人の手仕事で作られています。光に当たるとキラリと瞬くので、薄暗い教会の中では特にその力を発揮します。揺らめくろうそくの光や、窓から差し込む日の光を反射して、幻想的な雰囲気を演出します。

ムリーネ(金太郎飴のようなガラス素材)、
貝殻、小石2種
(川石。海の石は塩分が入っているため使えません)、
タイル2種。
4.その他
小石や貝殻は、大理石やズマルト、オーロと同じように、何千年も昔から使われてきた素材です。小石を使ったモザイクはMosaico di ciottoli(モザイコ ディ チョットリ)と呼ばれ一つのジャンルを形成していますし、貝殻では真珠母貝などは、高貴な人物モザイクの装飾に好んで用いられました。もちろんタイルも昔から大切なモザイクの素材で、現代では様々な種類のタイルモザイクを見ることが出来ます。
モザイクの魅力の一つは、素材の魅力です。大地が永い時間をかけて作った大理石の色、質感。職人が毎朝色チェックをして維持しているズマルトのグラデーション。自然のもの、人の手によるもの、さまざまな欠片(テッセラ)を織り交ぜて、世界に一つだけのモザイクが生まれ、そしてまた長い時間残ります。素材を生かすモザイクをじっくり作っていきたいですね。