1週間ほど前、モザイク講座のために大阪へ行って来ました。主催は京都造形芸術大学、場所は大阪駅にほど近い、京都造形芸術大学の大阪サテライトキャンパスです。木とガラスの組み合わせが美しい大阪富国生命ビル(ドミニク・ペロー氏設計!)の一室に、古代ローマが誕生。この講座は、文化財保護のスペシャリスト、内田俊秀先生とのコラボレーション講座。先生の講義を聞いてから、モザイクの技法を説明して制作に入ります。参加者40名のほとんどは大学の通信教育部の学生さんたち。みなさん、日本画や陶芸、染色などを専門的に学ばれている方々でした。


今回は集中講座、2日間で制作を終わらせねばなりません。ローマ時代のモザイク職人並みの素早さが要求されます。そんな今回、用いたのはmetodo diretto、直接技法。大理石を割り、セメントを塗布し、その上に下絵を転写してどんどん石片(テッセラ)を並べていく技法です。通常の定期教室では時間に余裕があるので、仮置きの工程をプラスしているのですが、今回は仮置きなしでどんどん並べていく、一発勝負。緊張感が漂います。最初はおっかなびっくりでも、どんどんカットに躊躇がなくなり、テッセラも適材適所。感覚が研ぎすまされていくのでしょう。40名が作業しているのに、教室内が静寂に包まれる時間もあったり。まさに工房といった緊迫感です。



並べ終わったら、最後に石で叩いてならします。高さをここで調整するんですね。ならす前に、最後のチェック。オリジナルの写真と比べて、修正すべき点があるかどうか。


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怒濤の2日間でしたが、無事に全員、作品が完成しました。同じ柄、模様を選んでも、出来上がった作品にはその人の個性が出ます。最後に完成した作品を並べて撮影会をしたのですが、みなさんのご自分の作品を見る目は、我が子の晴れ舞台を見つめる親御さんのような。
セメントの乾燥との闘いでもある、直接技法。急いで作るから、作品に個性がにじみ出てくるように思います。そしてそれが固着して、永く残る。「ここのカーブは苦労したんだよね」とか「あの角っこのテッセラはうまく作れたな」とか。見返す度に、モザイクを作った時間のことを思い出していただけたら嬉しいですね。