イタリア、ラヴェンナの悠久の時間を感じながら・・・モザイク散歩

京都造形芸術大学芸術学研究室勤務後、イタリア・ラヴェンナに渡りモ ザイク工房ココ モザイコにてアリアンナ・ガッロに師事。 工房ではモザイク技術の習得と同時に日本からのモザイク研修などをプ ロデュースする。帰国後は東京でモザイク工房モザイコカンポをオープン。 銀座・エコールプランタンや、イタリア語語学学校等でモザイク教室を 開講、美術館や大学でのワークショップも随時開催。
モザイコ カンポ/Mosaico Campo(東京)https://mosaicocampo.com/
ココ モザイコ/Koko Mosaico(イタリア ラヴェン ナ)https://kokomosaico.com/

vol.12 モザイク旅日記 ヴェネツィア編 〜「足元」の魅力〜

 

nuovo全体

 

夕日に急かされるように迷い込んだ細い路地を抜けて、パッと目の前に広がる大運河と波の音。あ、ヴェネツィアに来て良かった、と思う一瞬。

 

さて、今回はヴェネツィアです。テーマは、「足元」。

 

古今東西、数限りなく褒め称えられたヴェネツィアの美しさ。右に左に上にと見るものだらけです。豪奢な美術館や宮殿、教会の中には、ジョルジョーネやティツィアーノやティントレット、グッゲンハイム美術館では運河を横目にポロックを見たいし、カルロ・スカルパの名建築や、安藤忠雄設計の現代美術館にだって…

 

ペギー・グッゲンハイム美術館門扉に飲み込まれたガラス
ペギー・グッゲンハイム美術館門
扉に飲み込まれたガラス
敷地ぎりぎりまでなんておしゃれな
敷地ぎりぎりまでなんて
おしゃれな

本当に、見所だらけなヴェネツィア。もちろんモザイクだってたくさんあります。サンマルコ聖堂といえばモザイクだらけだし、トルチェッロ島にも心揺さぶる見事なモザイク、運河からパラッツォを眺めたら外壁にはモザイクだし、ビエンナーレ会場内(ジャルディー二)にも…

 

サン・マルコ聖堂のモザイク外観。内部撮影不可
サン・マルコ聖堂のモザイク外観。内部撮影不可
ヴァポレット(水上バス)から見えるズマルトモザイク
ヴァポレット(水上バス)から見えるズマルトモザイク
トルチェッロ島のSanta Maria Assunta聖堂外観。こちらも内部撮影不可(※)
トルチェッロ島のSanta Maria Assunta聖堂外観。
こちらも内部撮影不可(※)
※トルチェッロ島のモザイクが気になる方は
[Torcello,Santa Maria Assunta]
と画像検索してみてください。
ビエンナーレ会場内のパビリオン。蔦が雰囲気にぴったり
ビエンナーレ会場内のパビリオン。
蔦が雰囲気にぴったり

 

しかし、灯台下暗しとは良く言ったものです。どうぞみなさま、ヴェネツィアでは「足元」にお気をつけください。比喩的な意味でなく、ほんとうに、その靴の下です。ヴェネツィアの足元ワールドには、お金を払わなくたって、並ばなくたって、ヴァポレットに乗らなくったって楽しめる、素敵なモザイクがたくさんあるのです。

 

まずは、こちら。

 

四隅の飛行機がキュート!

四隅の飛行機がキュート!

 

ご存知、イタリアの航空会社ALITALIA。目に鮮やかな赤・青・白!ズマルトですね。そうなんです。ご紹介するのは、モザイク床看板。

 

迷宮とも呼ばれる、ヴェネツィアの道。とくに細い路地が入り組んでいるサンマルコ広場の周囲は人の多さも相まって見通しが悪く、道を見失う事もしばしば。そんな時に大活躍なのが足元のモザイク床看板。多彩なコレクションをご覧ください。

 

有名なあのカードも・・・
有名なあのカードも・・・
銀塩カメラ派はこちらへ。お土産も!
銀塩カメラ派はこちらへ。お土産も!
お腹が空いたら、トラットリアはこちら
お腹が空いたら、
トラットリアはこちら
ヴェネツィアの夜は長い!街にネオンはありません
ヴェネツィアの夜は長い!
街にネオンはありません
ALBERGO = ホテルの床看板も
ALBERGO = ホテルの床看板も
VIAGGI = TRAVEL。旅人の味方トラベルオフィスへ
VIAGGI = TRAVEL。
旅人の味方トラベルオフィスへ

・・・まだまだこれは一部。ヴェネツィアには本当に色鮮やかで魅力的な床看板モザイクが山ほどあります!

 

お土産探しも大切だけれど、宝探し気分でモザイク看板を探して回るのもヴェネツィアの楽しみ方の一つかも知れません。おすすめです。

 

最後に。いわゆる「モザイク」とは言わないのかもしれないけれど、ヴェネツィアらしい、とっておきの足元をひとつ。

 

 

そう、石畳!

 

ヴェネツィア大学前本屋のお兄さん曰く、ヴェネツィアは地盤沈下の問題があるので、床も石畳も真っ平らに作ると、沈下の力が一点に集中して危険。だからあえてボコボコに、波のように仕上げるとのこと。もちろん、波打っているので随時補修は必要だけれどね、と。まさか、あえてのボコボコだったとは・・・やけに表情があるなとは思っていましたけれど・・・? もちろん、このままお兄さんの言う事をまるまる信じるわけにはいかないけれど、でも確かに時折石畳でみかけるのがこのような状態。

 

穴あき

穴あき

こんな石畳をどうするかというと…

 

Provvisorio = 作業中
Provvisorio = 作業中
Provvisorio = 作業中
Provvisorio = 作業中

ささっとセメントで取りあえずの応急処置。これが何とも言えない魅力なんです。割れたお茶碗補修する「金継ぎ」のような、格好の良さと言いますか…ひとつひとつ、ちゃんと「作業中」と書くのも好感度高し!モザイクにしても、石畳にしても、人の手の跡、温度が感じられます。

 

もしかしたら世界一の観光都市かもしれないけれど、一方でそこに住んでいる人、故郷だと感じている人もたくさん居ます。ヴェネツィアで生活を営んでいるそんな彼らが、この街を大事に手入れしている。そんな事をふと感じさせてくれる、ヴェネツィア足元ワールド。

 

ヴェネツィアのような並外れた観光資源があるわけでなくとも、自分の住む街や故郷を、出来るだけ大切に、出来るだけ美しく繕って、次の世代へ手渡したいと願うのは、至って自然な欲求なのかもしれませんね。

 

少し奥に入ると、ヴェネツィア本島内にもこんな風景か
少し奥に入ると、ヴェネツィア本島内にもこんな風景が
冬の窓辺
冬の窓辺