vol.9 木材を燃やす

木材は可燃物です。当然燃えますが、「木材を燃やす」と言っても色々です。「燃えてしまう」という悪い場面もあれば、「燃やせる」といった良い場面もあります。

 

悪い場面とは火事です。木造建築は火事に弱いと思っている人が大半かと思いますが、それは木材が燃えてしまう材料だからです。震災や戦争で燃えてしまう木造建築の町を火災に強い町にしようと、法律や政策がコンクリート造などの非木造を推進してきたという歴史も必然的なことです。

 

木材は1分間に0.6?程度炭化しながらゆっくり燃えます。
photo01:木材は
1分間に0.6?程度炭化しながらゆっくり燃えます。

しかし最近、木造でも火事に強い建物がつくれるということも分かってきました。バーベキューの時、小さな木片や割り箸などから着火させると思いますが、いきなり大きな薪や炭を入れてもなかなか着火しませんよね。この、厚くて太い木材はなかなか燃えない、ゆっくり燃える(photo01)、という性質を利用して、科学的な検証も踏まえて建築の法律が次々に変わり始めています。町や建物に木材をたくさん使おう(前回コラム参照)、という今の動きの大きな推進力にもなっています。

 

では、良い場面とは何でしょうか?それは「燃料」としての利用です。石炭や石油が出てくる前は、薪や炭といった木材が貴重な燃料だった訳ですが、もう一度燃料としての木材を見直そうという動きも活発化しています。

 

木材のチップは紙やボードの原料の他、燃料としても利用されています。
photo02:木材のチップは
紙やボードの原料の他、燃料としても利用されています。

石炭や石油を燃やすと大量の二酸化炭素が出てしまうため、二酸化炭素を出さない自然エネルギーへの転換が望まれていますが、木材もこの自然エネルギーの一つとして扱われています。専門的には木質バイオマスエネルギーと言われます。石炭や石油も木材と同じような天然資源なのに、なぜ木材は良いのか?ということですが、「カーボンニュートラル」という特有の性質が木材には認められています。カーボン(炭素)がニュートラル(中立)?石炭や石油といった化石燃料は何万年もの間閉じ込めてきた炭素が一気に放出されるのに対して、木材は燃やして炭素が放出されても、森林で次に成長する木々が吸収してくれるため相殺され、結果として大気中の二酸化炭素は増えないという考え方です。再生される時間が化石燃料に比べてはるかに短いから、と考えてもいいです。省CO2対策として、製材工場などでは重油から木材チップ(photo02)へ、燃料の代替も進められています。

 

 
薪ストーブ。西欧では火を見て楽しむインテリアとしても使われています。
photo3:薪ストーブ。
西欧では火を見て楽しむインテリアとしても使われています。

私たちの今の暮らしで、いきなり薪や炭で煮炊きをすることは難しいですが、東日本大震災でも大活躍した薪やペレット(チップやおが粉を固めて使いやすくした燃料)を燃やすストーブであれば、条件が整えば都市部でも取り入れることが可能です(photo03)。エアコンのようにスイッチ一つでという訳にはいきませんが、好きな方も結構いるのではないでしょうか。暖房機器としても輻射熱によって家全体や体の芯から温める薪ストーブは理想的です。ちょっとした調理も可能です。最近はストーブのショールームも増えていますので、一度訪れて体験してみてはいかがでしょうか。

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