vol.7 ウッドマイルズ?その3

ウッドマイルズ(木材の輸送距離)が大きくなると、輸送エネルギーの増加以外にも、不利になることがあります。それは「木材の顔」が見え難くなることです。

 

今、全国的に「顔の見える木材」を普及する活動が行われていますが、木材の顔とは何でしょうか? 木目や色合い、香り、と言ったものも木材の顔と言えるのかもしれませんが、ここで言う「木材の顔」とは、木材が生まれ育った森林や、どこで誰が加工したのかなど、木材の生い立ちのことを意味しています。物が生産された過程を辿ることができることはトレーサビリティーを確保するとも言われます。食料品では産地偽装などで一時期問題になりましたが、木材についても徐々に重要視されるようになってきました。木材は口に入れるものではないため、食料品ほど安全性をシビアに問うものではありませんが、顔が見えることによる大きな効果が期待されています。

 

どこの山の木か分からない木で建てた木造住宅と、育った森林や手入れをしてきた林業家の人、丸太を購入した市場や製品に加工した人などが全て分かる、顔の見える木で建てた木造住宅を想像してみて下さい(photo01?04)。どちらの家が長持ちするでしょうか?当然のことながら顔の見える木の家が長持ちします。愛着感が生まれるからです。現在の住宅の寿命は、残念ながら物の耐久性ではなく、このような心理的な要因で決まってしまうのがほとんどです。

photo01:木材の伐り出し
photo01:木材の伐り出し
photo02:原木市場
photo02:原木市場
photo03:製材所
photo03:製材所
photo04:木材の加工場
photo04:木材の加工場
 

もう一つ、木材は工業製品とは異なり、太陽と地球の恵みによって山で育つ天然資源であるため、顔が見えると木材が生まれた森林とつながることができます。私達が森林とつながることが、顔の見える木材を使う最大のメリットだと個人的には思っています。国産材や地域材による家づくりを行っている建設業者であれば、少なからず森林の体験見学ツアーを開催していますので、家づくりを考えている人も、そうでない人も、一度参加してみてはいかがでしょうか。間違いなくその木を使いたくなるはずです。そして使うことによってその山に貢献できることが実感できるはずです(photo05,06)。

photo05:森林見学ツアー
photo05:森林見学ツアー
photo06:森林見学ツアー
photo06:森林見学ツアー
 

木材の顔が見えなければ、ウッドマイルズを評価することもできません。山と消費地の距離が長くなればなるほど、多くの中継地点が存在するため、必然的に木材の顔は見え難くなります。当たり前ですが、近くの地域材ほど顔が見え易いのです。木材に限る話ではありませんが、「顔が見える」という力について、注目してみてください。

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