vol.5 ウッドマイルズ?その1

どこの森林から来た木材なのかを知る方法の一つに、ウッドマイルズという考え方があります。これは私も深く関わっているウッドマイルズ研究会(http://woodmiles.net/)が提唱している、ウッド(wood)にマイル(miles)という距離の単位を加えた造語で、木材の輸送距離を示すものです。

 
各国から日本へ輸入される木材の輸送距離
photo01:各国から日本へ輸入される木材の輸送距離

日本は木材の8割を輸入に頼っていますが、ウッドマイルズを示すと、さらに色々なことが分かってきます。(photo01)建築物に多用されるベイマツは北米から7千?以上船で運ばれてきます。ホワイトウッドは、こちらも建築物に多用されるものですが、船の輸送距離が2万2千?以上にもなります。その他にもロシア、南米、オセアニア、南洋と、世界中のあらゆる国々から、膨大な輸送距離を経て日本にやって来ていることが分かります(photo02 / photo03)。

ニュージーランドの木材運搬トラック
photo02:ニュージーランドの木材運搬トラック
新湊港に停泊するロシア船籍木材輸送船
photo03:新湊港に停泊するロシア船籍木材輸送船
 
3カ国の木材輸入量とウッドマイレージ
photo04:3カ国の木材輸入量とウッドマイレージ
各国のフードマイレージ(出典:全国地球温暖化防止活動推進センター)
photo05:各国のフードマイレージ
(出典:全国地球温暖化防止活動推進センター)

また、ウッドマイルズ(輸送距離)に運んできた量(木材の場合はm3)を掛け合わせたものをウッドマイレージと呼び、国々の木材貿易の態様を示す指標として使っています。「輸送距離×輸送量」、ちょっとイメージし難いかもしれませんが、世界で最も木材を輸入しているアメリカと、ヨーロッパで最も多く木材を輸入しているドイツと比較してみましょう(photo04)。木材の輸入量を見てみると日本はアメリカより若干少ないですが、ウッドマイレージはアメリカの約5倍になります。ドイツと比べると約21倍です。つまり日本は、木材を輸入する時の輸送距離が他の国々に比べ極端に長い、ということです。

 

これは木材に限った話ではありません。ウッドマイレージという指標には、フードマイレージという先輩がいます。ウッドマイレージは「木材」ですが、フードマイレージは「食糧」をテーマにした同様の指標です。食糧の自給率は木材よりも少し高いですが、各国のフードマイレージを見てみると、木材同様、日本はダントツトップです(photo05)。

 

世界中から物が輸送できる世の中は確かに便利ですが、輸送距離が長くなると、時間もかかりますし、安全性の管理も難しくなります。そしてなにより、膨大な輸送エネルギーが必要になります(輸送エネルギーについては次回コラムで)。国産材を使うことは、結果として、この輸送距離を縮めることにもつながります。

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