私は”鉄”のおんな

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鉄の道具店の入り口あたりにあったものを、奥の方に移してみると、こんなのもあったのかしら、みたいなカンジで、意外と目にとまったりしますね。あと、使い方を変えてみたりすると、あ、うちでも、こういうふうに使ってみようかしら、と思われるみたいですね、しばらく売れなかったものでも、3年くらい置いてあったものでも、これいいじゃないって、急に、手にとって見られたりすることもありますね。

そうすると、もの自身も、見られていると思うらしく、自信を持ってきて、私のこと、見て見て、みたいに—ものも、胸を張るカンジなんですよ。ああ、でも、なんでこんなにいいのが売れないんだろう、と思って、自分で使っちゃおうとかも、しますね。—自画自賛しちゃってね。

値段を下げればいいのかもしれませんが、でも、いろいろな想いがあって、—めったにないのを買ってきたのに、とか思うと—値段は下げたくないし。極端にいえば、1万円のものを千円にすれば、動くかもしれないけど、やっぱりそうはしないで、そのよさを自分で味わっちゃおうと思いますね。

やー、でもねえ、今日売れたから明日も売れるか、というものでもないし—私もトシを重ねてくると、今日、できたことが、明日もできるか、というと—同じように、フランスへ行って、同じように仕入れて、同じように荷づくりして送って、というのも、どこまで、できるかなあと思いますね。体力もいりますから。でもね、あまり先の不安を思うよりも、今日のことを、考える。

だって 奇跡的ですよ。ありがたいことですよ。好きな国へ行って、好きなものを買ってきて、それを気に入ってくださった方とめぐりあえるのは—お店を開いているからこそ、なので。

窓際ものもね、パッと見て、何に使うのかわからないのも、ありますよね。そうすると、説明を聞いたり、紙に描いてもらったり、帰ったあとで、道具の本で調べて、あ、わかった、わかった、—とそれも楽しいですね。同じ人間が、作って使っていたものだ、ということが、ね。

しかも、随分、時を経て、気がついたら異国の人の手にあるとは…。

 

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