「森の散歩道」(英題:Animals)2014年8月 製作
「森の散歩道」(英題:Animals)2014年8月 製作

まずは、定番のモビールをご紹介したいと思います。動物たちがいっぱいのモビールで、主役のクマ(名前は「くまる君」といいます)が、森の中をトコトコ歩く様子を描きました。

前回お話したとおり、インテリアとしてのモビールは元々知育玩具として誕生しました。赤ちゃんの上に吊り下げられることを想定して作られているので、可愛らしいモビールが多いのです。私たちも負けじと、赤ちゃんが喜んでくれるようなモビールを作りたくて出来上がったのが、この「森の散歩道」。

いつも最初の試作品は、パートナーである妻に見せて意見を仰ぐのですが、もちろん「可愛い~!」という声を期待していました。でも、返って来た意見はこう…「茶色が多くて地味ね」。意見が合わないこともしばしばで、その時は主観的になりすぎてないかなど、プロダクトとして良いモノになるように考え直します。私たちのモビールは、印刷をせずに、紙の地色のみで表現しています。2色や3色で表現されているように見えるのは、別の色の紙を貼り合わせて作られているからなのです。だから、真っ先に検討するのは、紙の色を変えてみること。クマの肌の色はこの色で良いかな? 鳥のくちばしはそのままで良いかな? などなど。何種類もの組み合わせの中から、最適なモノを検討して、ようやく最終的なプロダクトができあがります。今回は妻の意見を受けてから、結局ほとんど色は変えませんでした。僕はやっぱり日本のモビールを作りたいので、子供向けといえども、深みのある色合いにしたかったのです。最終的に妻もそのことに納得してくれました。

モビール さるじつを言うと、モビールを作り始めたばかりの頃は、カラフルな色合いのものばかり作っていました。子供にとってもその方が楽しいのかなと思っていたのです。でも、ある時気がつきました。地味な色を使っていても、可愛さは表現できるし、なんだかその方が良いなぁと思えたのです。日本の文化や芸能の歴史を振り返ってみても、どこか影があるというか、トーンを抑えた色が多く使われている。西洋にはない、日本独自の可愛さというのがあると思う。渋い+可愛いで“シブカワ”とでも呼べばいいのかな。

茶色を基調とした定番モビール。どこかの“シブカワ”好きの赤ちゃんの上で回っていたら嬉しいな。