『葉っぱ』(英題:Leaves)2013年10月製作
 
『葉っぱ』(英題:Leaves)2013年10月製作

5月といえば新緑の季節。気候がだんだんと暖かくなってきて、夏へ近づいていくとともに、街中でも徐々に緑が増えていきます。そんな穏やかな季節にぴったりなのが、この葉っぱのモビール。

これまでのコラムを読んでいただいている方には、いつもと少し雰囲気が違うように感じられるかもしれません。私たちのモビールは基本的には、赤ちゃんや子供向けの知育玩具として製作していますが、この葉っぱのモビールだけは、大人の部屋に飾っていただけるようなインテリアとして作りました。

葉っぱの色は2色あり、それぞれを組み合わせて自分の好きな形に作ることができます。先月の「こいのぼり」もそうでしたが、年々住宅事情も変化し、街中にいると自然を感じることも少なくなっています。その代わりと言っては大袈裟かもしれませんが、少しでもお部屋の中に“ゆとり”を取り入れられたらいいなぁと思い、製作しました。紙も、元々“木”から作られていますので、やっぱり見たり触ったりするだけで、どこか落ち着くんですよね。


英語の“book(本)”の語源は、樹木の“beech(ブナ)”から来ているということを、最近知りました。今では気に留めることもないですが、昔は樹木から丁寧に一枚一枚、紙を作っていました。ヨーロッパでは、ブナの木から紙が作られることが多かったのでしょう。日本では、樺の木(カバノキ)から作られるのが主流だったそうなので、「樺(カバ)」が転じて、「紙(カミ)」と呼ばれるようになったと言われています。そういえば、「本」と「木」という漢字も、棒一本の違いですね!

写真1:左は製品に使用する部分。右は廃棄されてしまうくりぬかれた部分。どちらも元は一枚の紙。  写真2:写真1の右側を集めたもの。集まるとより植物に近いものがあり、捨てるのをためらってしまいます。
 
葉っぱのモビールは、樹木から作られた「紙」で、また「樹木」を表現するということをしています。自然を感じる事が少なくなった現代だからこそ、インテリアからも自然を感じられるものであって欲しい。風でゆらゆらと揺れるモビール。お部屋の中でも自然を感じていただけますように。

※参考文献:『日本の工芸4 紙』(淡交新社)