第14回 佐渡で 海にタッチ!

 仕事の繁忙期も一段落して、今度は私の夏休み。佐渡の旅に行ってきた。
 三度目の佐渡。今回は直江津港からマウンテンバイクを積んで、自転車好きの友人二人とその一人の息子(中学二年生/魚類博士)と一緒に、めざせ一泊二日で佐渡一周!・・・と意気込んだものの、周囲210kmのこの島は甘くなかった。アップダウンが多い上に、途中で自転車を下りてのんびり観光したり、道に迷ったり、パンクを修理したり(!)していたものだから、結局回れたのは島の南西部のみ、全体の三分の一程度。自転車に跨がり続けてお尻は痛いし、日焼けした肌もひりひり痛いし(久しぶりに水ぶくれまでできた)、朝から晩まで漕いで体力も限界。

フェリーから。かもめが気持ち良さそうだ
フェリーから。
かもめが気持ち良さそうだ
遠くに見えるのは最北端の二ツ亀
遠くに見えるのは最北端の二ツ亀
 
パンク修理も度々・・・
パンク修理も度々・・・
 

 

 そんなわけで一周はとても果たせなかったけれど、強烈な思い出になった。だってずっと真っ青な海、真っ青な空、ギラギラの太陽、そして汗まみれの身体。すごく懐かしい感じがした。そう、これは中学・高校の部活でテニスに明け暮れていた夏と同じだ。エアコンなんて求めようもない、ただただ太陽の下で汗をかき、息を切らして、体を夏に"捧げる"ような感じ。大人になると"暑さ"は克服されるべきものになり、そうこうしていると"夏"と距離ができて、いつの間にか季節は秋に変わっている。どぷんとその暑さに、太陽の日差しに、蝉のけたたましい鳴き声の中に、自分を投げ入れたらどうなるか。ただ「暑い〜!!」と叫ぶしかない。そのくらいのシンプルさで夏を楽しんだ旅だった。

テント泊の朝。今日も長いぞー
テント泊の朝。今日も長いぞー
海を見ながら走る
海を見ながら走る
南の岬をめざす
南の岬をめざす

 

 佐渡の海は青い。柏崎などの日本海沿いでは、海底に砂鉄が混じっているため、太陽が強い日でもなんとなく黒ずんで見えるのだが、佐渡の海はまさにクレヨンの青色をしていて、近づくと海藻や魚がはっきり見えるほど澄んでいる。その水が、光と風を受けてさらさらとゆらぐ。宝石みたいだ。海全体が宝石。そういえば、佐渡は金山で有名だが、金が出る所には他の鉱石もあり、水晶や瑪瑙(めのう)、有名な佐渡の赤玉石も金と共にたくさん採れたのだそうだ。大規模な道路工事などがある度に鉱石が出てきたし、それはまだたくさん眠っていると、ドライブインの人が話していた。目に映る大地の奥に、見たこともない宝石がきらきらと輝きを放ちながら眠っている。宝石の島。その素敵な響きが佐渡にはぴったりだと思った。

見蕩れるほどの青
見蕩れるほどの青
橋の上から。水面がゆれている
橋の上から。水面がゆれている
透明すぎて丸見え!
透明すぎて丸見え!

 

 今回のルートで一番印象に残ったのは、旅の後半の素浜海岸から宿根木までの海沿いの道。国道から海の方へぐんぐん下っていった先にある素浜海岸は、シーズンが過ぎたからか人影もなく時間が止まったようにしんと静まっていた。外国かと錯覚するような異界感。ハマナスの実が真っ赤に熟している。右手に砂浜と海、左手に田んぼという細い道は、適度にアップダウンを繰り返し、海に沿って続いている。手を伸ばせばすぐ海に触れられるような近さで暮らしている集落をいくつか抜けて、岬を越え、海面から数十メートルの高さにある橋をわたり、昔は北前船で栄えた古い街並の残る宿根木へ。どの道の風景も楽しかったけれど、島の南端のこのルートは、手があまり付けられていない古い佐渡を通ってきたような感じだった。

素浜海岸を走る
素浜海岸を走る
海まで下る
海まで下る
宿根木の街並。細い路地
宿根木の街並。細い路地

 

 そして、もう日も暮れかかった頃、シュノーケルをつけて小木の海へ。二日間溜め続けた熱を冷ますように夢中で海の中を泳いだ。佐渡の海の豊かさは潜ってみるとよくわかる。生き物の種類がとても多いのだ。魚を追いかけていると、彼らも夕方になって自分のねぐらに帰ろうとしているのが分かった。

海に潜ったら・・・クロダイの群れ
海に潜ったら・・・クロダイの群れ
夕暮れの海
夕暮れの海

 

青い青い海が心に住んだ。体が全力で全開だったから、なおさらその青が染みついた。今でもあの青を想うと、清々しい力をもらえる気がする。

Back Namber