第13回 五竜岳で 夕日にタッチ!

 夏山シーズン到来。この時期には高い山で一晩を過ごしたくなる。山で過ごす昼、夕方、夜、そして朝。 時計の針の進み方を少し遅くする。大地に足をつけ、空を仰ぐ。それ以外はない、ぜいたくな時間。


 北アルプスの北のエリア、白馬八方尾根から唐松岳へ。登山道には少し雪が残っていたけれど、問題なく歩いて行けた。空の青がどこまでも続く。

唐松岳山頂にて
唐松岳山頂にて
水朝日に染まる唐松岳
朝日に染まる唐松岳

 

 唐松岳から五竜方面へは、切り立った岩場を越えていく。遠くの五竜岳がふかふかした雲を従えている。


唐松~五竜の鎖場
唐松~五竜の鎖場
劔岳から連なる尾根が遠くに
劔岳から連なる尾根が遠くに

 

 五竜山荘に着いたのは16時半。テントを張る。太陽はなかなか沈まない。こんなに時間がかかるのだっけ?というより、ここの時間がゆっくりすぎるのだ。何をするでもない、何もすることがない。真っ白い雲のわずかな動きと、空の青さだけを眺めている。

五竜岳を仰ぐ
五竜岳を仰ぐ
雲をまとう五竜
雲をまとう五竜
テント場から五竜
テント場から五竜

 

 雲の色が変わってきた。薄い赤がたなびいている。青、どこまでも宙。さわれそうでさわれない。いや、すでにふれているのだ。雲は渦になって、終わろうとする太陽を祝福している。

 

 テント場よりも高い尾根へ出てみると、夕日に染まった空の反対に満月が浮かんでいた。右手に太陽、左手に月。赤い空、青い空。陽と陰。昼と夜。光と闇。私はその真ん中で、地球の上に立っている。


夕方の五竜方面に竜の雲が
夕方の五竜方面に竜の雲が
沈みかけの夕日
沈みかけの夕日
正面に月
正面に月

 

 そのスケールを確かめたくなるのだ、たまに。例えば夕方も、日常では風景のようになってしまうから。本当は私たちはすごくすごく大きな星の動きの中にいて、奇跡のようなつながりを経てここに存在できている。

 

 夜、風が強くて「ほんとに朝は来るの?」ってほど不安になったけれど、朝の光はその日もちゃんと訪れた。

太陽が昇った。妙高方面に彩雲が
太陽が昇った。妙高方面に彩雲が

 


<コースタイム>
1日目:八方尾根ゴンドラ&リフト(20分)==9:40八方池山荘--八方尾根--13:30唐松岳--16:30五竜山荘(テント泊)
2日目:(朝日を見る)6:00五竜山荘--7:00五竜岳--8:00五竜山荘--遠見尾根--11:30地蔵の頭==徒歩&白馬五竜テレキャビン(20分)==バスで八方方面へ

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