第3回 「北アルプスで 秘湯の露天風呂にタッチ!」

 北アルプス・水晶岳界隈を、テントを背負って縦走の旅。
梅雨明け宣言が出たばかりの「裏銀座」(高瀬ダムから槍ヶ岳を目指すルート)はまだ人も少なくて、山を"独り占め"のような山行だった。
 

 流れの速い大きな雲、ジリジリと焦がす夏の太陽。2600m級の稜線からは遠くに槍ヶ岳のトンガリが見晴らせる。「この先は何にどんな景色に会えるんだろう?」とわくわくしながら、天空の荒野を一歩一歩わたっていく。

photo1遠くに槍ヶ岳。裏銀座の天空の道
photo1:遠くに槍ヶ岳。
裏銀座の天空の道
photo2烏帽子小屋の朝、ひょうたん池のキャンプ場で空がみえた
photo2:烏帽子小屋の朝、
ひょうたん池のキャンプ場で空がみえた

 

もうそれだけで満足だったのだけれど、二日目にふと「温泉に入りたいな~」と思いつき、水晶岳から高天原へ降りることにした。
 

 この温泉までは他の一番近いルートを取っても山中での二泊三日の行程になり、「日本一行きにくい秘湯」と言われている。水晶岳から目指すには標高差1000mの急勾配を下り、沢を通らなくてはならない。ただでさえ通る人が少ないこのルートは雪解け直後でほとんど踏み跡がないし、ざらざらした細かい岩を滑るみたいに下りる。足がへろへろになりながら藪を抜けて沢に着き、さらにその沢づたいに1kmほど歩いたところで、ほのかに硫黄臭がしてきた。
そしてやっと露天温泉、到着。
男湯の方の湯舟は、ただ岩に囲まれただけの作りで、空も川も仰ぐ全開感が味わえそうな感じ 笑。女湯の方へ回ると、四方がいちおう仕切られていて、5、6人で入れるほどのこじんまりした小屋になっていた。岩場で湧く源泉を直にパイプで引っぱって溜めている、まさに天然・かけ流しの温泉。ぬるめ。
はあ~。いただきました。

photo3温泉沢の分岐。ここから3時間の急な下り
photo3:温泉沢の分岐。
ここから3時間の急な下り
photo4ひっそりある高天原温泉
photo4:ひっそりある高天原温泉
 
湯船から
photo5:湯船から
 

photo6温泉に入ってもう動けない状態だったので、近くにテントを張らせていただきました
photo6:温泉に入って
もう動けない状態だったので、近くにテントを張らせていただきました

 二日間ストレスをかけ続けた体が温泉にふれてぐわっとひらいて緩むような。お湯に浮かんで青い空を眺めながら、ぽけーっと脱力する至福。山さんありがとう、温泉さんありがとう、体さんありがとう・・・本当にすべてに感謝したのだった。
私たちが授かったこの体はすごい。いろんな場所に連れていってくれ、いろんな出会いを感覚を通して伝え、喜ばせてくれるんだ。結果として、体がその後何日も悲鳴をあげるような大変な山行だったのだけど、同時に体を優しくいたわる嬉しさも知った。
 

 いまも、この体という器に憩っているような、馴染んでいるような、そんな感覚に浸かっている。

 
 

 <コースタイム>
一日目:七倉ダム--(タクシーで15分)--11:30 高瀬ダム---17:30 烏帽子小屋
二日目:5:30 烏帽子小屋---9:00 野口五郎岳---12:00 水晶小屋--(水晶岳)--14:00 温泉沢への分岐---17:00 高天原温泉
三日目:5:00 高天原温泉---10:00 水晶小屋---16:00 烏帽子小屋---20:30 高瀬ダム着
 

※ 相当無理のある行程でした。7月の日の長い時期で、かつ幸運にも晴天続きだったので可能でした。
お勧めしません笑
※ 高天原へは「折立」からのルート(小屋泊の往復で二泊三日)が一般的。

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