第11回 赤城山で早春の氷にタッチ!

 ここのところなかなか山へ行けず体にカビが生えそうだったので、台風(並の爆弾低気圧)一過の赤城山へ。前日からの暴風で、少し降ったという雪も飛んでしまったようで、登山道はガチガチの氷が剥き出しになっていた。スタートからアイゼン着用で森へ入る。


 もう春だというのに、雪の衣を落とした木々の足下の地面に頑固な氷が居座っている。お日様が触れても思いついたように光るだけで、一向に解けようとしない氷。四方から吹く風が時折"ぶん"と音を立てて騒ぎ、どこかへ去っていく。青い空の高い所を猛スピードで流れる雲は、早送りのスライドショーみたいに目の前の景色をくるくる変えていく。

バキバキに氷る登山道
バキバキに氷る登山道
氷柱に層ができている
氷柱に層ができている
川みたいに流れ込む氷
川みたいに流れ込む氷

 

 「あぁ山に来てよかったなあ」と思った。こんな不思議な天気の時間を、他の自然の皆さんと共有できるのが嬉しかった。私にとって、登山は親友のところへ遊びに行く感覚に近いなあと再認識。


 日本百名山の一つでもある赤城山は、いくつもの山頂が連なっている火山。尾根からはこの時期、青白く凍ったカルデラ湖の大沼や小沼が望める。そんな風景に見蕩れながら尾根を歩いていたらあっと言う間にガスがかかってきて、駒ヶ岳に着く頃は眺望はなし。風速は地上10mの地点で計るそうだが、試しに笹の葉を飛ばしたら一瞬で10mは飛んでいった。

真っ白に光る赤城山
小沼と関東平野が望める
小沼と関東平野が望める
真っ白に光る赤城山

 

 そんな風の中、黒檜山頂近くの神社でお昼を食べて、最近私の手元に来た「ラブフルート」(アメリカインディアンの笛)を吹いた。いろいろな所で吹いてみているのだけど、場所によって音の響きが様々に変わる。ここで吹く音は、少し擦れて風に転がされる急ぎ足の音。手もかじかんで痛かったので早々に引き上げる。黒檜山頂の温度計を見たら、マイナス4℃だった。尾根直下の林のシラカバやハンノキは、開きかけた新芽を再び氷の膜の中に埋めていた。

黒檜山の神社
黒檜山の神社
 
新芽を細かい氷が覆う
新芽を細かい氷が覆う
 
このサーモスの水筒「山専ボトル」がスグレもの!
このサーモスの水筒
「山専ボトル」がスグレもの!

 

 一人としか行き会わなかった山行。トレースを外れて気ままに歩いたりしながらのんびりして、ぼけーっと立ち止まって、呼吸をゆっくり地面に返して。「グラウンディング」と言うけれど、火山はそういう力が強く働くような気がするんだよな、ハワイ島や御嶽山や那須岳や。下半身がじんわりする、エネルギーが入るような感じ。終わりの方は呼吸が深く入って、歩くのが本当に心地良くなっていた。体がひらく、ひらく体・・・地球とつながる"ドア"になる感覚。


 まだまだ歩いていられたけれど、大沼にある赤城神社を通って帰路に着く。強い低気圧の通過で、早春の不思議な冷たさに包まれた赤城。花咲く暖かさを待っているのはみんな同じ。

赤城神社から大沼
赤城神社から大沼
大沼。島になっているのが赤城神社・韃
大沼。島になっているのが赤城神社。

 

<コースタイム>
11:00 赤城公園前登山口--12:15 駒ヶ岳--(神社でお昼)--14:00 黒檜山--15:00 赤城神社--15:20 公園前登山

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