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7月8日(金) ~

7月26日(火)

松原賢展 蓮華渇仰

玄羅 松原賢展 蓮華渇仰

「蓮」に寄せて

若くして逝った妻の棺に人れたのは、 一本の赤い蓮の華が咲く写真だった。 深い悲嘆の底なしの沼の中。 世俗の泥の中から出立した魂の行き先に、 せめて、 仏がおわす蓮華座の清らかさと静けさがあるという極楽浄土を託した思いだったのかもしれない。
「泥中の蓮華」は、 仏の世界に限らず、 今を生きる人の世の在り方をも言うのだろうが、 清らかな 蓮華の美の純粋さに、 人はただ魅了されるに違いない。 蓮は、 人にとって特別な植物であり、 精神を潤す意匠であると思う。 古来の絵画だけではなく、 李朝の焼きものにあるような清廉な蓮の画を見 ても、 人が蓮華に寄せる様々な心の拠りどころを見る思いがする。
昨年、 松原賢さんは石川県羽咋市のH蓮宗の古刹妙法寺から「日蓮図」の襖絵を依頼され、幽玄な世界観を示した。 仏縁あればこその仕事であるが、 この画家の来た道を思えば、不思議はない。
蓮を主題に選んだ今回の個展は、 蓮尽くしの壮観である。 華の美しさを通した透明な宇宙、 ロ ータス効果と呼ばれる撥水性の菜が弾く水玉の軽やかな空気。 どの画家も、 一つの精神世界を描こうとするとき、 伝統の強い、 使い古された凡庸な図像に陥る危険性があるが、 ここには、 そんな憂慮は一切ない。 ただ仔ます、 歩み続けることは難しいことだが、 七十歳を越え、 悲喜こもごも、 すべてを心の中に含有して生きている画家の今の心眼を知る思いがするのだ。
人は悲しいときも、 うれしいときも、 花に心の空間を託す。 描かれた蓮は、 彼我の世をのみ込む美として昇華している。

黒谷誠仁

日 時2022年7月8日(金)〜7月26日(火)12:00~17:00
※休廊日 水・木曜日
※作家在廊日 7/8(金)~7/10(日)・7/26(火)
場 所玄羅 石川県金沢市本町2-15-1 ポルテ金沢3F
H Phttp://genraart.com/
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