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4月14日(金) ~

5月2日(火)

安永頼山展「古典の地平から」

玄羅 安永頼山展「古典の地平から」

足りないとあれこれ探し
集めているうちに、
余計なものを随分と
抱え込んでしまいました。
要らないものを捨てて
シンプルに。

安永頼山

多くの優れた茶陶を生み出してきた唐津の地で作陶を行う安永頼山。
日本の伝統工芸展へも「茶器」で入選しており、近年、その仕事にますます磨きをかけている。
土、形、釉薬、焼きに工夫を凝らした個展に根差したその作品は、古陶愛好家の心をつかんで離さないものがある。
しかし、安永は「唐津」や「茶陶」とは意識的に距離を取り、そのうえで冷静に自己の仕事を築き上げてきた作家ではないか。
つまり、既成の評価軸と対峙したうえで、あらためて自らの感性を「唐津」や「茶碗」として顕現させているのである。

例えば、2022年の日本伝統工芸展に入選した筒形の《唐津茶盌》。
その質感から一見、古風を感じさせるが、作品においては、肉厚の腰部の一部が釉薬をはぎとるかのように大胆に削り取られている。
それにより胎土と釉薬と「ささくれだった」表面とが視覚および触感において対比的に融合する。
この場合は茶碗であることが、鑑賞者(使用者)に個々の身体間隔にまでその意識の拡張を促すものである。
この試みは「唐津茶碗」を構成する要素を解体的に融合させることで新たな鑑賞(使用)体験を生み出し、その体験をもとに歴史との新たな関係を紡ぎ出していくものだといえる。

その意味で、多くの陶芸家が手掛けるような表面に削りを入れて造形的な変化を生み出す方法論とは行為の根底において大きく異なっている。
かつて、樂直入が焼貫の茶碗を世に問うたとき、ある茶の宗匠が「こんな茶碗で茶を飲むようになったのか」と嘆いたというエピソードが伝わっている。
樂が「初代長次郎」(古典)を対象化し自己の問題として内在化させることではじめて「現在」の造形(茶碗)を生み出し得たのだとすれば、おそらく安永も同様の地平から古典を捉えている。
ただし、安永が柔軟に土や釉薬の味や茶碗という形式を利用するのは、古典に迫る外観(既成概念)とその実感とが生み出すずれを通じて、「もの」への認識そのものを問うているからなのであろう。

京都国立近代美術館
主任研究員 大長智弘

安永頼山
1970年 島根県益田市に生まれる
2001年 田中佐次郎氏に師事
2003年 藤ノ木土平氏に師事
2008年 現在地に登り窯を築窯
2013年 田中佐次郎氏命名の「頼山」に改名
2016年 京都野村美術館にて茶碗展開催(以後、'19~'22)
      第六三回日本伝統工芸展入選[唐津茶盌](以後、'21~'22)
2017年 第三四回田部美術館大賞「茶の湯造形展」入選[黒唐津茶盌]
     第五二回西武伝統工芸展入選[唐津茶盌](以後、'18~'22)
     第七回菊池ビエンナーレ入選[唐津茶盌](以後、'19)
2019年 第二五回日本陶芸展入選[唐津茶盌]
     現在形の陶芸 萩大賞展Ⅴ佳作[唐津茶盌](以後、'23)
2021年 「近代工芸と茶の湯のうつわ」展出品 国立工芸館
日 時2023年4月14日(金)~5月2日(火)12:00~17:00
※定休日 水・木曜日
※作家在廊日 4/15(金)
場 所玄羅 石川県金沢市本町2-15-1 ポルテ金沢3F
H Phttp://genraart.com/
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