駄菓子あります

店には駄菓子コーナーがある。昔の店で使っていた木箱に、定番の当たり付きガムや今どきの子に人気のものを取り混ぜて、約30種。平日は習い事で忙しい子どもたちは、週末に来てくれる。また、不思議な外観が気になってか、車で通りかかる家族連れが立ち寄ってくれることも多い。

古道具に駄菓子、という組み合わせを聞いた時は、「?」と思った。もともと祖父母の店でも置いていたらしく、古道具担当にとっては必須だったようだ。開店準備中に県内の駄菓子屋に話を聞きに行ったり、問屋を探したり、市場に行ったりして仕入れてきた。糸引き飴、きなこ棒、当たり付きガム、型抜き、おまけ付きキャラメル、グリーンガム、こんぺいとう、ジューC、チョコボール、パラソルチョコ、ホットケーキ、ミルキー…昭和感満載だ。問屋さんのアドバイスで、チューイングキャンディーやスナック菓子も並べた。

開店当初は珍しさもあって、駄菓子コーナーは地域の子どもたちで盛り上がった。男の子達には当たり付きが人気で、それぞれ独自に観察・分析を重ねて当たりを連発させる子もいた。子どもに慣れていない店番はその勢いに圧倒されたが、駄菓子を楽しむ姿はうれしいものだ。でもブームはすぐ終わったり、また急に、と波が激しい。そして成長も早く、小学校2、3年生の子があっという間に高学年や中学生になると姿を見せなくなる。店も卒業されると寂しいが、ある日急に、シュッとした高校生になって訪ねてきてくれることもある(でも、言われないと全然わからない)。

古道具を見に来たお客さんは、駄菓子にとても驚く。ごちゃついた店内に「縄文土器と駄菓子が一緒に並んでいる!」と喜んでくださる方がいた。また、子どもがゆっくり時間をかけて選ぶ姿に、「自分たちが古道具を見るように、駄菓子を選んでいる」としみじみと話してくれた方もいた。店番的にはいつもの光景なのだが、古道具担当にはこういう意図もあったのだろうか。ちなみに、その子のその日の駄菓子は青で統一されていた。

「最近駄菓子屋が増えてるんですってね」と、お客さんから言われたり、江戸時代からのお店や、角打ちの傍ら、施設の一角、地域住民が再開など、駄菓子屋にまつわるネットニュースを見ることが多い。スーパーや百均でも駄菓子は置いていて、そちらは実にお買い得だ。でも、家でも学校でもないちょっと変わった空間そのものは、在ったほうがいいなと思う。自分のお小遣いの範囲で計算しながら、好きなものをゆっくり選べる場。そこはささやかながら自分の世界を持つ入口なのではないか。

駄菓子にも当然賞味期限があり、季節に合わせて入れ替えもするし、商品としての継続はなかなかキビシイ。うちでは尚更だ。会計すると「安!」と言う子が結構いる。そう、駄菓子はホントに安い。だから子どものためのものなのだが、この頃では“商売”というより“福祉”という気がしている。

福祉とは…「しあわせ。幸福。」岩波国語辞典第2版(1976年第7刷)

コロナ以降、品揃えが少し変わってしまったり、子どもの少ない地域だし、いつまでできるか、と思うが、「店長のおススメはどれですか?」と聞かれると、ついあれこれ答えてしまうのである。

スポーツ少年団の練習がない時、週1くらいで来る子。いつもよりゆっくり、念入りに選んだ、“青”の駄菓子たち。
スポーツ少年団の練習がない時、週1くらいで来る子。いつもよりゆっくり、念入りに選んだ、“青”の駄菓子たち。