小松イ草のフラワーアートイ草と聞いて思い浮かぶのは「畳」ですが、このほどイ草を使ったスイーツが誕生しました!

小松イ草は約550年という長い歴史を持っています。寛正3年(1462年)ごろ、自生していたイ草を移植して栽培したのが小松イ草の始まりと言われています。石川県にある小松城に入城した加賀藩3代藩主・前田利常が、奨励して以来イ草の栽培は広く普及し、大正時代には全国の生産量第5位になるほどに至りました。
日本の主なイ草の産地は熊本県八代地方で、国産畳表の9割のシェアがあり、歴史的文化財の再生にも使用される高級品も出荷しています。他にも、福岡県、高知県、広島県、岡山県でも生産され、石川県小松市のイ草は最北に位置しています。日本の暖かい地方での生産が多いのですが、小松イ草は雪国の厳しい自然環境で栽培されています。そのため“硬くて丈夫で光沢の良い”イ草が生産されているのです。

小松イ草のスイーツしかし、日本固有の畳文化は生活様式の変化により和室の減少、畳の需要も減少の一途を辿っています。それに加えて安価な中国産の輸入により、国内の生産農家も減少しています。小松イ草の最盛期(昭和30年)には約1400戸だった農家が、今では1戸となってしまったのです。「新たな需要を開拓しない限り、小松イ草は途絶えてしまう」。この危機感から“小松イ草拡大プロジェクト”を、石川県中小企業団体中央会が立ち上げました。プロジェクトメンバーは、畳職人、家具アーティスト、フラワーアーティスト、茶人、キャンドルアーティスト、パティシエと様々な分野のクリエイターで構成されています。この中でやはり気になるのがパティシエの存在。イ草とスイーツが結びつかないからです。

イ草は主に畳表として使用されていますが、その昔は「薬草」として存在していたのです。
多くの文献に「イ草は毒性がなく、利尿薬、消炎薬としての効能がある」と記されています。イ草は100gあたり約63%が食物繊維で、ゴボウやモロヘイヤよりもその量は多いそうです。最近ではイグサを食用としての利用も進められているようで、熊本県では、イ草茶、イ草まんじゅう、イ草うどん等々さまざまな商品が販売されています。そして金沢では、小松イ草を使ったスイーツ「マカロン」が誕生しました!フランスのお菓子で日本でも専門店が目白押しのあのマカロンです。金沢市内で堀田洋菓子店を営むパティシエ堀田茂吉さんが、金沢大学医学部付属病院と連携し開発されたマカロンです。
堀田氏は糖質offのスイーツ開発を積極的に行っており、健康上の理由で糖分を制限されている方に対し、体に優しいスイーツを提案しています。

小松イ草マカロン
若草色の綺麗なマカロンは、小松イ草を素揚げにして細かく粉砕したものに、小松イ草の粉末を入れてパリッと焼き上げられました。サンドされたクリームには、小松イ草の粉末とホワイトチョコのガナッシュとクレームオブールで作ったクリームに能登大納言の小豆が挟まれています。一口マカロンを口にすると、イ草の香りが口いっぱいに広がり、縁側に腰掛け庭を眺めながら食べたくなるような、ホッとする感覚がありました。日本の懐かしい昭和の時代が甦ります。クリームの歯切れもよく軽い食感が楽しめました。
今後はどんなイ草スイーツが誕生するのか楽しみです。

オイシイモノ紀行 山根ひとみ

 
堀田洋菓子店
石川県金沢市扇町1-3
TEL.076-231-2657
※小松イ草マカロンは、堀田洋菓子店で1個189円(税込)で販売中です。

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山根ひとみ
石川県金沢市在住。
日本フードアナリスト協会東京本部・北信越支部広報委員。
実家が農家ということもあり、農家さんの思いを形にしたいと、6次産業化や農商工連携アドバイザーを務める。フードアナリストとして石川の食を発信中。趣味は食べ歩き。