今年の12月に全国ロードショーとなる『武士の献立』(監督 朝原雄三)にちなみ、金沢では復刻料理が注目を集めています。2011年に公開された『武士の家計簿』(主演 堺雅人、監督 森田芳光)に続く『加賀藩シリーズ』の第2弾となるこの映画は江戸時代の加賀藩・前田家の殿様に仕えた料理人・舟木伝内、安信親子の物語です。優れた舌と料理の腕を見込まれ、加賀藩の料理方として代々仕えている舟木家に嫁いだお春(上戸彩)と、お春の夫で舟木家の跡取りながら料理が苦手な安信(高良健吾)が料理を通じ、次第に心を通い合わせ成長しさまざまな難局を乗り越えていく時代劇です。

舟木伝内、安信親子が江戸中期に著した『料理無言抄(りょうりむごんしょう)』『料理の栞(りょうりのしおり)』『庖厨調飪規矩(ほうちゅうちょうじんきく)』を参考に現代の料理人が「殿様が食した味」を再現し、その食イベント【加賀藩 季節の味づくし】(北国リビング新聞社企画)が毎回好評を得ています。

車鯛の酒浸、茄子の亀甲焼き、大鯛の唐蒸しや、治部

第1回目は老舗料亭・金城樓で行われ、車鯛の酒浸、茄子の亀甲焼き、大鯛の唐蒸しや、治部、などが再現されました。金沢の郷土料理として今でも結婚式などのハレの日の料理として登場する 鯛の唐蒸しは、切腹を連想させるから腹開きではなく背開きにして料理するなど、料理の仕方1つにも縁を担いでいたという話も登場したり、今では治部煮と呼んでいる郷土料理も昔は治部が正式名で、猟が好きだった殿様の好物、鴨のお肉が欠かせない。などその当時の話が聞けてなかなか面白いイベントです。

前菜7種盛り 手前がいなだ、鱸の鍔蓼焼きとヘタ紫茄子の蓮華焼き、あつめ汁

第2回目はホテル日航金沢の日本料理・弁慶で行われた【加賀藩 武士の寿司会席】では、焼き蛸、鯛の琉球焼き、茄子の蓮華焼きや、前田利家が豊臣秀吉の天下統一を祝って振る舞ったとされる「あつめ汁」が再現され、その名前の由来はゴボウや大根、人参、サトイモなど野菜を手当たり次第集めて作ったから。今の金沢では白味噌や合わせ味噌が一般的ですが、前田利家は尾張出身なので当時は赤味噌が主流だった。とか、今ではマグロが魚の王様とされていますが、江戸時代には鰹が珍重され1本10両もした。という裏話まで聞くことができました。そして、いなだは、藩政期から製法が変わらず、殿様が食した味そのままのものを味わえるという貴重な一品も登場しました。想像もつかない江戸時代・加賀藩のころですが、調理器具、交通、電化製品など不便なころに、これほど豪華な料理があったのか!と感心させられました。

この食イベント【加賀藩 季節の味づくし】は、あと4回開催される予定です。毎回会場となる料亭やホテルの料理長・板長が料理について解説してくれます。金沢が何故にこれほど食文化が発達してきたのか、謎が解けるかもしれませんよ。

オイシイモノ紀行 山根ひとみ

これからの開催場所:
8月 老舗料亭 金茶寮
9月 懐石 つる幸
10月 料亭 つば甚
11月 金沢石亭
問合せ: 北国リビング新聞社
Tel:076-260-3406
所在地:石川県金沢市南町2-1
参加費:8,000円

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山根ひとみ
石川県金沢市在住。
日本フードアナリスト協会東京本部・北信越支部広報委員。
実家が農家ということもあり、農家さんの思いを形にしたいと、6次産業化や農商工連携アドバイザーを務める。フードアナリストとして石川の食を発信中。趣味は食べ歩き。