東山の町並み江戸時代から茶屋街として栄えてきた東山は、格子戸の連なる町家から、時折、芸妓が奏でる三味線やお太鼓の音が聞こえてきます。金沢市民でさえも東山に足を踏み入れると、日常の慌ただしい生活を忘れ心が躍ります。金沢の人気観光地としても有名な、東山の華麗な町並みを訪れたことがある方も多いのではないでしょうか?

金澤寿し店内の花嫁のれんそんな東山に、金沢の郷土料理のひとつである押し寿司をアレンジした体験厨房「金澤寿し」があります。金沢には昔からお祭りやお祝いごとには押し寿司を作って、みんなで食べるという風習がありました。そして戦後には、笹もちにヒントを得て2枚のクマザサで包んだ笹寿司が主流となり、いまもなお金沢市民の大好きな食べ物のひとつです。「金澤寿し」では、地元の食材をふんだんに使ったオリジナルの押し寿司を作ることができます。

「金沢の食だけにこだわらず、歴史や文化、風習などを若い人達に伝えていきたい」と語る周田店長の他、スタッフは60歳以上のベテラン主婦が多く、体験をしている最中も金沢の工芸品やオイシイモノの話は尽きず、まるで田舎のおばちゃんのお家に遊びにでも行ったかのような居心地のよいおもてなしに、ついつい長居をしてしまいそうです。

押し寿司体験

「金澤寿し」オリジナルの押し寿司体験(1,500円)に使われる樽は、たくさんの具材を楽しみながら載せて欲しいという店長の思いやりから。具材(季節により変わります)は、15種類以上とバラエティー豊かで、能登の干し椎茸や加賀野菜の加賀蓮根に五郎島金時、白山市美川で加工されているフグの糠漬け。富山のホタルイカの丸干し。そして金沢の郷土料理であるゴリの佃煮と、海や山の幸が丸ごと詰め込まれています。もち米を混ぜて炊いてある酢飯はもっちりとしていて、1口ごとに具材の味が楽しめる金澤寿しオリジナルの押し寿司は、飽きがこなくて食べていても面白いです。

終了証酢飯を広げ、具材を並べ、仕上げに漬物石でしばらく圧をかけた後、竹の棒で挟み、圧をかけたまま持ち帰ります。なかには東山を散策した後に、浅野川のほとりで食べる方もいるようです。色合いを見ながら、隣り合う具材の味を想像しながら並べていくのは結構難しいのですが、お母さん達のアドバイスにより無事完成しました! 体験が終わると、金沢弁で書かれた終了証が手渡され、金沢ツウになった気分にもなれます。

オイシイモノ紀行 山根ひとみ

石川県金沢市東山1丁目15-6
Tel 076‐251‐8869

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山根ひとみ
石川県金沢市在住。
日本フードアナリスト協会東京本部・北信越支部広報委員。
実家が農家ということもあり、農家さんの思いを形にしたいと、6次産業化や農商工連携アドバイザーを務める。フードアナリストとして石川の食を発信中。趣味は食べ歩き。