news letter 「住まいと健康」を考える 東賢一

生活衛生関係の厚生労働省報告

以下のサイトに厚生労働省が開催した平成28年度生活衛生関係技術担当者研修会の報告資料が公開されています。

平成28年度生活衛生関係技術担当者研修会(平成28年2月6日

1)建築物環境衛生管理に係る行政監視等に関する研究について
2)清掃インスペクター及びエコチューニングについて
3)最近のレジオネラ症の発生動向
4)レジオネラ症の国際動向
5)レジオネラの検査法と外部精度管理
6)温泉施設におけるレジオネラ症発生予防対策について~管内公衆浴場への指導を顧みて~
7)温泉施設における安全上の危険部位と対策
8)配管洗浄の方法

建築物衛生やレジオネラなど、近年の調査研究の結果が紹介されていますので、ご関心のある方は、ご参考いただければと思います。

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米国疾病管理予防センターが鉛の基準値の見直しを検討

鉛は青みを帯びた銀白色の柔らかい金属で、陶器や魚網の鉛錘、水道管、弾丸、貨幣、屋根瓦、鉛蓄電池、耐食材料、電極材料、はんだ材料、放射線防護材、遮音材、装飾品、塗料などに利用されてきました。有鉛ガソリンにも使用されたことがあり、環境中に広く残存しています。

住宅では塗料に使用されていたこともあり、古い家に使用されていた鉛含有塗料が剥がれ落ちて部屋のダスト中に含まれている場合が報告されています。

鉛は低濃度で神経毒性を発現することが大きな問題となっています。血中の鉛濃度が鉛曝露の指標として有用とされており、血中鉛濃度の基準値が設定されています。

小児では10 μg/dL未満の血中鉛濃度で認識力、注意力、言語機能の障害が観察されています。また近年は、注意力に関する機能障害、攻撃性、非行に関連していることが確認されています。鉛の慢性毒性では生体影響に閾値がないと考えられており、血中鉛濃度は10 μg/dL 以下でも十分ではないとされています。

米国CDCは2004 年の時点では、小児の血中鉛濃度10μg/dL 未満における健康影響について科学的知見の整理を行った結果、10μg/dL 未満の血中鉛濃度で小児の健康に影響をおよぼす証拠はある が、10μg/dL 未満に削減するための有効な対策が明らかでないことから、小児の血中鉛濃度の削減目標10μg/dLをさらに下げることはしないと判断していました。

一方、世界保健機関(WHO)欧州事務局は、近年の研究で10μg/dL未満の血中鉛濃度の小児で知能指数(IQ)の低下が観察されたことから、血中鉛濃度を可能な限り低くするための予防活動を始めるべきだと勧告していました。

その後CDCは、2012年9月には6際未満の小児の基準として、5μg/dL 未満の血中鉛濃度を設定しました。

そして昨年末、米国CDCは、最新の米国における全国調査の結果に基づいて、血中鉛濃度の基準値を数ヶ月以内に3.5μg/dL未満に下げる可能性があると発表しました。

2016年12月30日ロイター公衆衛生ニュースより
https://www.scientificamerican.com/article/exclusive-cdc-considers-lowering-threshold-level-for-lead-exposure/?WT.mc_id=SA_TW_HLTH_NEWS#

鉛は塗料やガソリンに使用されてきましたが、すでに現在では使用禁止となっています。しかし最新の調査でも、米国では小児で平均1.0μg/dL程度曝露しており、3.5μg/dL未満に下げても約2.5%の小児がこの基準値を超えています

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欧州連合におけるフタル酸エステル類規制の動向

フタル酸エステル類は、主に塩化ビニル樹脂(ポリ塩化ビニル)の可塑剤として使用されています。可塑剤とは、樹脂を柔らかくする添加物です。他にも、溶剤、洗剤、繊維の潤滑剤、香料の保留剤、人工皮革など多くの製品に使用されています。

昨年2月のトピックで、デンマークが4つのフタル酸エステル類(フタル酸ジ-2-エチルヘキシル(DEHP)、フタル酸ブチルベンジル(BzBP)、フタル酸ジ-n-ブチル(DBP)、フタル酸ジ-イソブチル(DIBP))を含む、室内で使用される製品の輸入と使用を禁止する規制を決定したが、最終的にデンマークはこの規制を撤回したことをお伝えしました。

ところがその後、欧州連合(EU)では、電子・電気機器における特定有害物質の使用制限に関するEU指令であるRoHS指令において、2015年6月よりフタル酸エステル類の4物質(DEHP、BBP、DBP、DIBP)が規制対象として正式に追加されました。

EU加盟国は、2016年12月31日までに上記指令に対応する国内法の整備が求められることになりました。各物質の最大許容濃度は、DEHPが0.1wt%、BBPが0.1wt%、DBPが0.1wt%、DIBPが0.1wt%となっており、デンマークが実施しようとした規制内容と同じです

電気・電子機器は2019年7月22日以降上市分から、医療機器および監視制御機器は2021年7月22日以降の上市分から適用が開始されます。

 

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ドイツ連邦環境庁によるホルムアルデヒドの室内空気質ガイドライン

ドイツでは、1977年に0.1 ppm(0.12 mg/m3)の室内空気質ガイドラインを公表しました。これは世界で最初のホルムアルデヒドの室内空気質ガイドラインです。その後、2004年に国際がん研究機関(IARC)がホルムアルデヒドをグループ1(ヒトに対する発がん物質)と評価したのを受けて、2006年に再評価を実施しましたが、0.1 ppm(0.12 mg/m3)を維持しました。

そして今般、2016年の再評価の結果、30分間平均値で0.1 mg/m3のガイドラインを公表しました。このガイドラインは、感覚刺激に基づくものです。またこのガイドラインは、1日のうちの天井値であって、1日のいかなる時間帯でも30分間平均値で0.1 mg/m3を超えないこととしています。

ドイツではさらに発がん性に関する評価も実施し、発がん性については、非喫煙者が0.1 mg/m3に80年間曝露した際の発がんリスクを1千万分の3と判断しました。日本では、生涯曝露の発がんリスクが10万分の1以下になるよう環境基準を設定します。従って、0.1 mg/m3で1千万分の3ということは、感覚刺 激のガイドライン0.1 mg/m3を守っていれば、発がんを防止できることになります。

実は、今回改訂したホルムアルデヒドの室内空気質ガイドラインは、世界保健機関(WHO)が2010年に公表したホルムアルデヒドの室内空気質ガイドラインと同じです。WHOのガイドラインを受けて、同じ内容に改訂したようです。

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米国環境保護庁による多世帯住居の室内空気質ガイドライン

米国環境保護庁による多世帯住居の室内空気質ガイドラインでは、室内の汚染物質対策のみならず、省エネルギーとの両立についても指針が示されています。また、建築中における室内空気汚染防止、住居の安全性確保、施工者の訓練や居住者の教育についても指針が示されています。主な項目を以下に示します。

・湿気制御とカビ
・アスベスト
・鉛
・ポリ塩化ビフェニル
・ラドン
・建材からの放散物質
・地下室汚染
・オゾンの室内発生源
・固形燃料からの燃焼生成物
・受動喫煙
・ガレージの空気汚染物質
・殺虫剤
・エアコン類
・不快臭の防止
・機械換気システム
・自然換気システム
・住居の安全性
・建築中の室内空気汚染防止
・施工者の訓練
・居住者の教育

本ガイドラインは、以下のサイトからダウンロード可能です。

Energy Savings Plus Health IAQ Guidelines for Multifamily Building Upgrades
https://www.epa.gov/indoor-air-quality-iaq/indoor-air-quality-guidelines-multifamily-building-upgrades-printable-file

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WHO健康開発総合研究センターとの共同研究ワーキンググループ

WHO健康開発総合研究センターは、今年の9月(11日、12日)にG7神戸保健大臣会合が開催されるこの機会に、関西公立私立医科大学・医学部連合との共同研究を開始することで、健康長寿社会の実現に向けて、世界へ貢献していきたいと考えています。

そのため、京都府立医科大学、関西医科大学、奈良県立医科大学、大阪市立大学、和歌山県立医科大学、大阪医科大学、兵庫医科大学、近畿大学(関西公立私立医科大学・医学部連合)とWHO健康開発総合研究センターは、保健医療問題や保健医療政策に共同で取り組むためのワーキンググループを発足します。ここでの研究分野は、以下の4分野となっています。

1)高齢社会における高性能住居、健康まちづくり
2)高齢社会におけるアシスティブテクノロジー
3)高齢社会における食育、オーラルケア
4)高齢社会におけるビッグデータの活用

本ワーキンググループの発足に関しては、平成28年9月5日(月)午後3時から京都府立医科大学で共同記者会見が実施されます。

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WHO報告書:都市部の健康に関するグローバル・レポート

世界保健機関(WHO)が国連人間居住計画(UN-HABITAT)と共同で今年発表した「都市部の健康に関するグローバル・レポート」を紹介します。この報告書の構成は以下のようになっています。

第1節 より健康な都市へのビジョン
1)持続可能な開発に向けた健康格差の縮小
2)都市でのユニバーサル・ヘルス・カバレッジの推進
3)感染性疾患に打ち勝つための都市の利点の活用
4)非感染性疾患:都市部において新たに蔓延する疾病の克服
5)21世紀型の栄養不良への取り組み
第2節 人々のための都市計画
6)すべての人に安全な水と衛生環境を提供する
7)より健康で、持続可能な都市設計
8)都市における移動手段の転換
9)住まいにおける健康改善
10)都市の安全を確かなものに
第3節 都市の行政:健康の公平性に向けて全体が連携した取り組みを

主要な論点は、都市における健康とその格差に複雑な課題があることです。ただ、都市において健康を増進するには、保健制度の強化だけでなく、都市環境の改善が重要だと指摘しています。

第2節-9「住まいにおける健康改善」の章は、皆さまにも関心の高いところかと思います。ここでは、(1)良質な住宅の不足問題、(2)既築住宅の適切な改善、(3)固形燃料の燃焼による室内空気汚染問題、(4)適切な費用対効果が得られる住宅開発、などについて解説がなされています。

WHOの報告書は、以下のサイトで入手可能です。日本語の要約(エグゼクティブ・サマリー)もあります。

Global Report on Urban Health: equitable healthier cities for sustainable development
http://www.who.int/kobe_centre/measuring/urban-global-report/ja/

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化学物質による公衆衛生への影響

この報告書では、2012年に世界中で130万人の生命と4300万の障害調整生命年(DALY: disability-adjusted life-years)が一部の化学物質への曝露によって失われたと報告しています。ただし、この報告書の推算値は、ごく一部の化学物質だけに基づいており、実際にはもっと多くの化学物質に曝露していると報告しています。推算に使用された化学物質を以下に示します。

1.急性中毒物質
1)予防可能な非意図的物質
メタノール、ジエチレングリコール、灯油、殺虫剤等
2)非意図的な産業中毒物質
同上
3)殺虫剤

2.長期間影響する単一の物質

3.長期間の影響を有する職業性曝露の物質
1)職業性の肺がん
ヒ素、石綿、ベリリウム、カドミウム、クロム、ディーゼル排ガス、ニッケル、シリカ
2)職業性の白血病
ベンゼン、酸化エチレン、電離放射線
3)慢性閉塞性肺疾患を生じる粒子(ダスト、フューム/ガス)

また、非意図的な中毒によって、毎年19万3千人が死亡し、その多くが予防可能であると報告しています。さらに、中毒センターを有している国は、世界中で約47%しかないと報告しています。

鉛含有塗料の規制を行っていない国は未だに多く、鉛への曝露を規制することによって、知的障害の9.8%、虚血性心疾患の4%、脳卒中の4.6%を防ぐことができると報告しています。

上記の推算には、空気汚染が含まれていません。大気汚染(粒子状物質、二酸化硫黄、窒素酸化物、ベンゾ[a]ピレン、ベンゼン、その他)、室内空気汚染(一酸化炭素、窒素酸化物、二酸化硫黄、ベンゼン、ホルムアルデヒド、多環芳香族炭化水素、粒子状物質、その他)、受動喫煙(ニコチン、ホルムアルデヒド、一酸化炭素、フェノール、窒素酸化物、ナフタレン、タール、ニトロソアミン、多環芳香族炭化水素、塩化ビニル、金属類、シアン化水素、アンモニア、その他)の3つだけで、2012年に世界中で860万人の生命と2億65000万の障害調整生命年(DALY: disability-adjusted life-years)が失われたと報告しています。

WHOの報告書は、以下のサイトで入手可能です。

Public health impact of chemicals: knowns and unknowns
http://www.who.int/ipcs/publications/chemicals-public-health-impact/en/

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発達神経毒性物質

先々週、第89回日本産業衛生学会が福島市で開催され、発達神経毒性物質に関するセミナーがありました。その中で、最近同定された12の発達毒性物質が紹介されました。

神経毒性とは、神経系(中枢、末梢、感覚器官)に対する有害作用であり、ヒトで神経毒性を有する物質は214物質確認されています。そのうちヒトで発達神経毒性を有する物質は、最近の報告によると、12物質確認されています。

発達神経毒性とは、胎児期あるいは生後発達期の神経系に対する有害作用です。例えば、メチル水銀による胎児性水俣病、エタノールによる発達障害が以前から報告されています。近年は、小児の学習障害(LD)、注意欠損・多動性障害(ADHD)、自閉症などにも関連していると考えられています。低濃度の鉛への曝露で知能指数(IQ)が低下することも報告されています。

近年、小児のいじめ、引きこもり、自殺等が増加しており、社会問題となっていますが、その原因のひとつに、身の回りの化学物質による発達神経毒性が懸念されています。環境省が進めているエコチル調査(小児環境保健の大規模疫学調査)では、発達神経毒性の調査が含まれています。

以下に、2006年までに知られていた発達神経毒性物質と、それ以降に同定された物質を示します。英国の権威ある医学雑誌「ランセット神経学The Lancet Neurology」で紹介されました。

2006年までに知られていた物質
・ヒ素とその化合物
・鉛(鉛含有塗料、有鉛ガソリンなど)
・メチル水銀(水俣病の原因物質)
・エタノール(アルコール飲料)
・トルエン(有機溶剤)
・ポリ塩化ビフェニル(電気絶縁油等)

2013年に新しく同定された物質
・フッ化物(フロン、フッ素樹脂、歯磨き剤など)
・マンガン
・テトラクロロエチレン(有機塩素系溶剤)
・クロルピリホス(有機リン系殺虫剤)
・DDT/DDE(有機塩素系殺虫剤)
・臭素化ジフェニルエーテル(難燃剤)

参考文献
Grandjean P, Landrigan PJ. Neurobehavioural effects of developmental toxicity. Lancet Neurol. 2014;13(3):330-338.

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米国環境保護庁による学校における大気汚染物質対策ガイドブック

米国では、約17000の学校が主要幹線道路から0.1マイル(約160メートル)以内に立地しており、カリフォルニア州では40万人以上の児童生徒が自動車排ガスによる大気汚染の影響を受ける学校に通っています。米国では、大気浄化法で自動車排ガス対策を実施してきたのですが、大気汚染レベルの高い地域に立地している学校が未だに存在しています。

児童生徒は成人よりも大気汚染物質に対する感受性が高く、呼吸器系に対する影響を成人よりも受けやすいと考えられています。また、成人よりも日常の活動量が多く、体重当たりの呼吸量も多いと考えられています。実際に、喘息の有病率は、成人よりも児童生徒の方が高率となっています。特に、低所得者層や少数民族の児童生徒は喘息の有病率が高く、大気汚染レベルの高い地域に立地している住宅に居住し、そのような場所に立地している学校に通学している比率が高いことも問題視されています。

USEPAが公表したガイドブックでは、これらの状況を鑑み、学校における換気設備や空気浄化設備のチェック、立地やレイアウトに関する助言、アイドリング防止、バス通学の促進、防音壁や植生壁等による大気汚染の曝露防止対策などをとりまとめ、児童生徒の両親、学校の教職員、公衆衛生従事者などに向けて、このガイドブックで提供しています。ガイドブックは、以下のサイトから入手できます。

Best Practices for Reducing Near-Road Pollution Exposure at Schools
http://www.epa.gov/schools/best-practices-reducing-near-road-pollution-exposure-schools

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