news letter 「住まいと健康」を考える 東賢一

世界保健機関(WHO):環境汚染による小児の死亡とその原因及び対策

WHOによると、5歳未満の小児の4人に1人が不健全な環境が原因で死亡しているとのことです。その主な原因は、室内空気汚染、大気汚染、受動喫煙、不衛生な飲料水、衛生環境の不足、不十分な衛生状態であり、毎年170万人の小児が死亡しているとのことです。

死亡原因の上位5疾病は以下の通りです。
1)推定死亡数57万人
肺炎、室内空気汚染、大気汚染、受動喫煙による気道感染症
2)推定死亡数36万人
不衛生な飲料水や衛生状態の悪化による下痢症
3)推定死亡数27万人
早産などによる生後1ヶ月以内の死亡
(安全な飲料水の確保や空気汚染の改善など、医療施設における衛生状態の改善で予防可能)
4)推定死亡数20万人
マラリア
(媒介蚊の削減などで予防可能)
5)推定死亡数20万人
落下や溺死など環境に起因するによる不慮の事故

これらの問題に対して、以下のような行動を世界各国の関係部門に呼びかけています。
・住宅
暖房や調理におけるクリーンな燃料の使用、カビや衛生害虫の削減、不安全や不衛生な建築材料の除去、鉛含有塗料の除去
・学校
安全な衛生環境の提供、騒音や汚染の低減、良質な栄養の促進
・医療施設
安全な飲料水や衛生状態、安定した電力の確保
・都市計画
より多くの緑化空間、安全な歩行路や自転車路の確保
・輸送
排気ガスの削減、公共交通機関の増加
・農業
有害な農薬の使用削減、小児の労働ゼロ
・産業
有害廃棄物の管理、有害化学物質の使用削減
・健康部門
健康状態の監視、環境衛生と疾病予防に関する教育

詳細は、以下のWHOのウエブサイトで閲覧できます。
http://who.int/mediacentre/news/releases/2017/pollution-child-death/en/

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ドイツの室内空気質ガイドライン-トルエン、キシレン、エチルベンゼンの総和の低減に向けて-

1996年に公表したガイドラインを見直し、以下のようになりました。ただし結果的には、1996年のガイドラインを維持する(同じ値)こととなりました。

ガイドライン1:0.3 mg/m3
ガイドライン2:3.0 mg/m3

また、トルエン、キシレン、エチルベンゼンは、同じような神経毒性を有していることから、それぞれのガイドラインに対する室内濃度の割合を合計した値(リスクの総和)が1未満になるように評価するよう求めています。これは新たな試みで、例えば以下のように評価します。

ガイドライン1は以下の通り
トルエン:0.3 mg/m3
キシレン:0.1 mg/m3
エチルベンゼン:0.2 mg/m3

実際の測定濃度が以下であった場合(個々の物質の濃度はガイドラインを下回っています)
トルエン:0.1 mg/m3
キシレン:0.05 mg/m3
エチルベンゼン:0.1 mg/m3

リスクの総和: 0.1/0.3(トルエン)+0.05/0.1(キシレン)+0.1/0.2(エチルベンゼン) = 1.3

リスクの総和が1.3ですので、1より大きいことから、対策を検討すべきという考えになります。このリスクの総和が1よりも小さくなるようにすべきということになります。

(参考)
ガイドライン2は健康影響ベース、ガイドライン1は予防のためのガイドラインです。ガイドライン2を越えていたならば、特に、長時間在住する感受性の高い居住者の健康に有害となる濃度と判断されるため、即座に濃度低減のための行動を起こすべきと定義されています。

ガイドライン1は、長期間曝露したとしても健康影響を引き起こす十分な科学的根拠がない値と考えられています。しかし、ガイドライン1を越えていると、健康上望ましくない平均的な曝露濃度よりも高くなるため、予防のために、ガイドライン1とガイドライン2の間の濃度である場合には行動する必要があると定義されています。

従って、ガイドライン1が、長期間曝露による健康影響を未然に防止するうえで目指していくべき室内空気質といえます。
 

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WHO報告書:小児の健康と環境

報告書「小児の健康と環境:持続可能な世界を受け継ぐこと?」の構成は以下のようになっています。

第1節 環境と小児の健康
1)小児の死亡率
2)不平等
3)肥満と発育阻害
4)環境の健康リスク
5)小児の傷害
 
第2節 すべての人の基本ニーズ
1)安全な水
2)水の衛生
3)手指の衛生
4)ヒ素とフッ素
5)生物が媒介する伝染病
 
第3節 新鮮な空気
1)気候変動
2)大気汚染
3)室内空気汚染
4)受動喫煙
5)紫外線曝露
 
第4節 化学的負荷の学習
1)小児と化学物質
2)汚染食品
3)鉛のない生活
4)水銀
5)中毒
6)電子・電気廃棄物
 
第5節 健康な環境での生活と学習
1)保健医療施設
2)都市空間
3)住居
4)健康な学校
5)小児の労働

この報告書は、2004年に出版した報告書のアップデート版です。都市化、工業化、地球規模化、気候変動など、この13年間に生じたさまざま課題をレビューし、全体にわたりアップデートしています。

WHOの報告書は、以下のサイトで入手可能となっています。

Inheriting a sustainable world: Atlas on children’s health and the environment
http://www.who.int/ceh/publications/inheriting-a-sustainable-world/en/

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生活衛生関係の厚生労働省報告

以下のサイトに厚生労働省が開催した平成28年度生活衛生関係技術担当者研修会の報告資料が公開されています。

平成28年度生活衛生関係技術担当者研修会(平成28年2月6日

1)建築物環境衛生管理に係る行政監視等に関する研究について
2)清掃インスペクター及びエコチューニングについて
3)最近のレジオネラ症の発生動向
4)レジオネラ症の国際動向
5)レジオネラの検査法と外部精度管理
6)温泉施設におけるレジオネラ症発生予防対策について~管内公衆浴場への指導を顧みて~
7)温泉施設における安全上の危険部位と対策
8)配管洗浄の方法

建築物衛生やレジオネラなど、近年の調査研究の結果が紹介されていますので、ご関心のある方は、ご参考いただければと思います。

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米国疾病管理予防センターが鉛の基準値の見直しを検討

鉛は青みを帯びた銀白色の柔らかい金属で、陶器や魚網の鉛錘、水道管、弾丸、貨幣、屋根瓦、鉛蓄電池、耐食材料、電極材料、はんだ材料、放射線防護材、遮音材、装飾品、塗料などに利用されてきました。有鉛ガソリンにも使用されたことがあり、環境中に広く残存しています。

住宅では塗料に使用されていたこともあり、古い家に使用されていた鉛含有塗料が剥がれ落ちて部屋のダスト中に含まれている場合が報告されています。

鉛は低濃度で神経毒性を発現することが大きな問題となっています。血中の鉛濃度が鉛曝露の指標として有用とされており、血中鉛濃度の基準値が設定されています。

小児では10 μg/dL未満の血中鉛濃度で認識力、注意力、言語機能の障害が観察されています。また近年は、注意力に関する機能障害、攻撃性、非行に関連していることが確認されています。鉛の慢性毒性では生体影響に閾値がないと考えられており、血中鉛濃度は10 μg/dL 以下でも十分ではないとされています。

米国CDCは2004 年の時点では、小児の血中鉛濃度10μg/dL 未満における健康影響について科学的知見の整理を行った結果、10μg/dL 未満の血中鉛濃度で小児の健康に影響をおよぼす証拠はある が、10μg/dL 未満に削減するための有効な対策が明らかでないことから、小児の血中鉛濃度の削減目標10μg/dLをさらに下げることはしないと判断していました。

一方、世界保健機関(WHO)欧州事務局は、近年の研究で10μg/dL未満の血中鉛濃度の小児で知能指数(IQ)の低下が観察されたことから、血中鉛濃度を可能な限り低くするための予防活動を始めるべきだと勧告していました。

その後CDCは、2012年9月には6際未満の小児の基準として、5μg/dL 未満の血中鉛濃度を設定しました。

そして昨年末、米国CDCは、最新の米国における全国調査の結果に基づいて、血中鉛濃度の基準値を数ヶ月以内に3.5μg/dL未満に下げる可能性があると発表しました。

2016年12月30日ロイター公衆衛生ニュースより
https://www.scientificamerican.com/article/exclusive-cdc-considers-lowering-threshold-level-for-lead-exposure/?WT.mc_id=SA_TW_HLTH_NEWS#

鉛は塗料やガソリンに使用されてきましたが、すでに現在では使用禁止となっています。しかし最新の調査でも、米国では小児で平均1.0μg/dL程度曝露しており、3.5μg/dL未満に下げても約2.5%の小児がこの基準値を超えています

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欧州連合におけるフタル酸エステル類規制の動向

フタル酸エステル類は、主に塩化ビニル樹脂(ポリ塩化ビニル)の可塑剤として使用されています。可塑剤とは、樹脂を柔らかくする添加物です。他にも、溶剤、洗剤、繊維の潤滑剤、香料の保留剤、人工皮革など多くの製品に使用されています。

昨年2月のトピックで、デンマークが4つのフタル酸エステル類(フタル酸ジ-2-エチルヘキシル(DEHP)、フタル酸ブチルベンジル(BzBP)、フタル酸ジ-n-ブチル(DBP)、フタル酸ジ-イソブチル(DIBP))を含む、室内で使用される製品の輸入と使用を禁止する規制を決定したが、最終的にデンマークはこの規制を撤回したことをお伝えしました。

ところがその後、欧州連合(EU)では、電子・電気機器における特定有害物質の使用制限に関するEU指令であるRoHS指令において、2015年6月よりフタル酸エステル類の4物質(DEHP、BBP、DBP、DIBP)が規制対象として正式に追加されました。

EU加盟国は、2016年12月31日までに上記指令に対応する国内法の整備が求められることになりました。各物質の最大許容濃度は、DEHPが0.1wt%、BBPが0.1wt%、DBPが0.1wt%、DIBPが0.1wt%となっており、デンマークが実施しようとした規制内容と同じです

電気・電子機器は2019年7月22日以降上市分から、医療機器および監視制御機器は2021年7月22日以降の上市分から適用が開始されます。

 

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ドイツ連邦環境庁によるホルムアルデヒドの室内空気質ガイドライン

ドイツでは、1977年に0.1 ppm(0.12 mg/m3)の室内空気質ガイドラインを公表しました。これは世界で最初のホルムアルデヒドの室内空気質ガイドラインです。その後、2004年に国際がん研究機関(IARC)がホルムアルデヒドをグループ1(ヒトに対する発がん物質)と評価したのを受けて、2006年に再評価を実施しましたが、0.1 ppm(0.12 mg/m3)を維持しました。

そして今般、2016年の再評価の結果、30分間平均値で0.1 mg/m3のガイドラインを公表しました。このガイドラインは、感覚刺激に基づくものです。またこのガイドラインは、1日のうちの天井値であって、1日のいかなる時間帯でも30分間平均値で0.1 mg/m3を超えないこととしています。

ドイツではさらに発がん性に関する評価も実施し、発がん性については、非喫煙者が0.1 mg/m3に80年間曝露した際の発がんリスクを1千万分の3と判断しました。日本では、生涯曝露の発がんリスクが10万分の1以下になるよう環境基準を設定します。従って、0.1 mg/m3で1千万分の3ということは、感覚刺 激のガイドライン0.1 mg/m3を守っていれば、発がんを防止できることになります。

実は、今回改訂したホルムアルデヒドの室内空気質ガイドラインは、世界保健機関(WHO)が2010年に公表したホルムアルデヒドの室内空気質ガイドラインと同じです。WHOのガイドラインを受けて、同じ内容に改訂したようです。

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米国環境保護庁による多世帯住居の室内空気質ガイドライン

米国環境保護庁による多世帯住居の室内空気質ガイドラインでは、室内の汚染物質対策のみならず、省エネルギーとの両立についても指針が示されています。また、建築中における室内空気汚染防止、住居の安全性確保、施工者の訓練や居住者の教育についても指針が示されています。主な項目を以下に示します。

・湿気制御とカビ
・アスベスト
・鉛
・ポリ塩化ビフェニル
・ラドン
・建材からの放散物質
・地下室汚染
・オゾンの室内発生源
・固形燃料からの燃焼生成物
・受動喫煙
・ガレージの空気汚染物質
・殺虫剤
・エアコン類
・不快臭の防止
・機械換気システム
・自然換気システム
・住居の安全性
・建築中の室内空気汚染防止
・施工者の訓練
・居住者の教育

本ガイドラインは、以下のサイトからダウンロード可能です。

Energy Savings Plus Health IAQ Guidelines for Multifamily Building Upgrades
https://www.epa.gov/indoor-air-quality-iaq/indoor-air-quality-guidelines-multifamily-building-upgrades-printable-file

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WHO健康開発総合研究センターとの共同研究ワーキンググループ

WHO健康開発総合研究センターは、今年の9月(11日、12日)にG7神戸保健大臣会合が開催されるこの機会に、関西公立私立医科大学・医学部連合との共同研究を開始することで、健康長寿社会の実現に向けて、世界へ貢献していきたいと考えています。

そのため、京都府立医科大学、関西医科大学、奈良県立医科大学、大阪市立大学、和歌山県立医科大学、大阪医科大学、兵庫医科大学、近畿大学(関西公立私立医科大学・医学部連合)とWHO健康開発総合研究センターは、保健医療問題や保健医療政策に共同で取り組むためのワーキンググループを発足します。ここでの研究分野は、以下の4分野となっています。

1)高齢社会における高性能住居、健康まちづくり
2)高齢社会におけるアシスティブテクノロジー
3)高齢社会における食育、オーラルケア
4)高齢社会におけるビッグデータの活用

本ワーキンググループの発足に関しては、平成28年9月5日(月)午後3時から京都府立医科大学で共同記者会見が実施されます。

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WHO報告書:都市部の健康に関するグローバル・レポート

世界保健機関(WHO)が国連人間居住計画(UN-HABITAT)と共同で今年発表した「都市部の健康に関するグローバル・レポート」を紹介します。この報告書の構成は以下のようになっています。

第1節 より健康な都市へのビジョン
1)持続可能な開発に向けた健康格差の縮小
2)都市でのユニバーサル・ヘルス・カバレッジの推進
3)感染性疾患に打ち勝つための都市の利点の活用
4)非感染性疾患:都市部において新たに蔓延する疾病の克服
5)21世紀型の栄養不良への取り組み
第2節 人々のための都市計画
6)すべての人に安全な水と衛生環境を提供する
7)より健康で、持続可能な都市設計
8)都市における移動手段の転換
9)住まいにおける健康改善
10)都市の安全を確かなものに
第3節 都市の行政:健康の公平性に向けて全体が連携した取り組みを

主要な論点は、都市における健康とその格差に複雑な課題があることです。ただ、都市において健康を増進するには、保健制度の強化だけでなく、都市環境の改善が重要だと指摘しています。

第2節-9「住まいにおける健康改善」の章は、皆さまにも関心の高いところかと思います。ここでは、(1)良質な住宅の不足問題、(2)既築住宅の適切な改善、(3)固形燃料の燃焼による室内空気汚染問題、(4)適切な費用対効果が得られる住宅開発、などについて解説がなされています。

WHOの報告書は、以下のサイトで入手可能です。日本語の要約(エグゼクティブ・サマリー)もあります。

Global Report on Urban Health: equitable healthier cities for sustainable development
http://www.who.int/kobe_centre/measuring/urban-global-report/ja/

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