news letter 「住まいと健康」を考える 東賢一

新型コロナウイルス感染症への感染と予防に関するWHOの情報とその他関連情報

Transmission of SARS-CoV-2: implications for infection prevention
precautions, Scientific Brief
https://www.who.int/publications/i/item/modes-of-transmission-of-virus-causing-covid-19-implications-for-ipc-precaution-recommendations

1.最近のエビデンスに基づく感染経路に関する要点
・どのような場所で、いつ、どのようにして感染が拡大するかを理解することが、感染拡大を防止するための有効な公衆衛生対策や感染予防措置を開発するうえで極めて重要。
・新型コロナウイルスに対する人から人への感染は、主には、唾液や気道の分泌物などのウイルスを含む分泌物を排出(咳、くしゃみ、会話、歌唱)する感染者との直接的な接触、間接的な接触、あるいは近距離接近(近接)で生じる。
・新型コロナウイルスの空気感染は、医療における特殊な手技(気管挿管・抜管、気道吸引、NPPV装着、気管切開、心肺蘇生、用手換気、気管支鏡検査、ネブライザー療法、誘発採痰等)を行う際に発生する飛沫核(エアロゾルとも呼ばれる)を通じて医療機関で生じることがある。室内で人が密集した空間との関連を報告するいくつかの集団感染事例(聖歌隊の練習、レストラン、フィトネスクラブ)において、飛沫感染と混じり合って空気感染(飛沫核感染)が生じた可能性が示唆されている。
・感染者から排出される飛沫は、周囲の物体に付着し、感染の媒介物(汚染された表面)となる。新型コロナウイルスによるこのような環境汚染の報告は多数あり、汚染された表面を手で触り、手を消毒する前に、その手で目・鼻・口を触ることで人から人へ感染する可能性は高い。(→いわゆる接触感染)
・現在の知見に基づくと、新型コロナウイルス感染症の人から人への伝播は、長い時間人と人が近接した場合、主には症状が出現している感染者から生じているが、感染者の症状が出現する前にも生じることがある。また、症状が出現しない感染者からウイルスが伝播することもあるが、どの程度このことが生じるのかは未だに不明であり、今後の研究が必要。
・さまざまな感染経路のうち、どの感染経路が重要であるかを解明する質の高い研究が早急に必要(特殊な医療手技によるエアロゾル発生がない状況における空気感染の役割、人から人への感染が生じるウイルスの曝露量、一人から多人数へ感染した事例(スーパースプレッダー)における状況とリスク要因、無症状者による感染や症状出現前に感染が生じている規模)。

2.今後の予防策について
WHOは、これまでの知見から、新型コロナウイルスの主な感染経路は接触感染と飛沫感染であると考えており、ある状況下(例えば、エアロゾルを発生する特殊な医療手技を用いる医療現場、人が密集かつ換気の悪い室内空間でも発生する可能性を秘めている)において、空気感染が起こるかもしれないと考えている。このような事例における研究を早急に行う必要があり、WHOは今後の予防策として以下の項目をあげている。
・感染の疑いのある人をできる限り迅速にとらえ、検査を行い、感染者全てを適切な施設に隔離する。
・感染者と濃厚接触した全ての人(濃厚接触者)を確認して隔離し、感染してケアが必要であれば隔離できるように、症状が出現した濃厚接触者を検査する。
・特殊な状況(例えば、地域感染が生じている公共の場、社会的距離の確保などの他の予防策がとれない場所)では繊維製マスクを着用する。
・新型コロナウイルス感染症の患者やその疑いのある人をケアする医療従事者においては、接触と飛沫に対する予防措置をとる。また、特殊な医療手技を用いてエアロゾルの発生がある場合、医療従事者は空気感染に対する予防措置をとる。
・全ての臨床現場で働く医療従事者や介護者は全ての作業中継続的に医療用マスクを使用する。
・どのような時でも、手指の消毒を頻繁に実施し、できる限り他人との社会的距離を確保し、咳エチケットを実施する。また、人が密集した場所、人と人が近接する場所、換気の悪い閉鎖空間を避ける。また、人と人が接近して密集した場所では他人を守るために繊維製マスクを着用する。また、全ての閉鎖空間では良好な換気を確保し、環境の清浄と消毒を適切に実施する。

その他の関連情報として、日本における新型コロナウイルス感染症の発生状況を解析した私の研究論文が2020年8月20日にプレスリリースされましたので、紹介いたします。

「新型コロナウイルスの日本の第一波を地域ごとに解析:天気の良い日の人々の行動や大気汚染が感染に影響する可能性」
近畿大学医学部 東 賢一
https://newscast.jp/news/4075855

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