6月7日(土) ~
6月17日(火)
小松未季
過日、小松さんからLINEが届いた。ポンポンポンと流れてきた複数枚の写真はざらざらっとしていて、砂漠のように見えた。
続けてメッセージには、こうあった。
「近況報告です。空気を作ろうと思ったら、海みたいになりました。空気を閉じ込めようと思っていましたがこれはこれで…」
それは大きな作品で、板ガラスに別の素材を合わせ、焼いて、一つにする。ガラスとの間に異物があると部分的に膨らみが生じて、中に空洞が出来る。
波のようでもあり、確かに、平らな面が広ければ広いほど海みたいだ。
近づいて見ると視界は粗い粒子でいっぱいになり、終いには何も見えなくなる。
そこには、一人で訪れた穏やかな海の世界が広がっている。
小松さんの小さな作業場にはストックされた素材が雑然と、でも大事そうに並んでいる。
板ガラス、割れた蛍光灯、ビー玉、ネジ、砂、粘土細工。
自身が制作したものもあるが、ほとんどが棄てられていたもので、何が、いつ、作品のピースとして召喚されるのかは分からないが、失敗した過去の制作物も素材として大事に取ってあるそうだ。
ガラスにガラス、または異素材を合わせて熱を加えると、どうなるのか。
1.割れる
2.時間をかけて割れる
3.一つになる
この実験は素材同士が受け入れあってこそ成功と言えそうだが、内包しても、相反して割れても、「泣き笑い」と表現し、どちらも自然な姿だと捉えている。
学生時代に吹いて、数年後に真っ二つに割れたというガラス鉢も素材としてきちんと置かれていた。
ガラスはただ美しいだけではなく脆い存在だからこそ、魅力的なのだ。
小松さんとは昨年に私が参加した、松本での小さなグループイベントで出会った。
その時に展示されていた『呼気』は最初に吹いた息のかたち・空気をガラスに閉じ込めた小作品で、時に自分自身が素材の一つとして寄り添うこともある。
私は隣で、ただ素材と素材を組み合わせて並べるというディスプレイをすることにしたのだが、作品と作家との間に少し距離がある点に親近感を覚えた。
ある程度のところで手放し、現象としてかたちを留めた作品は、表現のために素材を利用していないように感じて気持ちが良かったのだ。
気が付くと、自分の搬入作業を後回しにして…キラキラした繊細な欠片たちが一番似合うであろう、居場所を彼女と一緒に探していた。
小松未季 1997年京都府生まれ 6歳より神奈川県藤沢市で育つ。 2022年武蔵野美術大学造形学部工芸工業デザイン学科ガラス専攻卒業 2024年同校大学院造形研究科修士課程美術専攻彫刻コース修了
photo:Kazumasa HARADA
日 時 | 2025年6月7日(土)〜6月17日(火)12:00~18:00 ※会期中無休 ※作家在廊日 6/7(土) |
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場 所 | Kit 京都府京都市上京区一町目853-2 |
H P | http://kit-s.info |
S N S | |
備 考 | ※詳しくはこちらをご覧ください。 |