日本のカメさがし!その2 ミシシッピ産に押しやられ日本のカメ大劣勢に

 前回は、日本のカメの世界にどうやら大異変が起きているらしいことをお伝えしました。「らしい」でなく、本当のところどうなのかを確かめるべく、昨年NACS-Jは大勢の人たちに参加してもらい大々的な「日本のカメさがし!」調査を行いました。その結果――。

「日本のカメさがし」全国調査地点

「日本のカメさがし」全国調査地点

じっくり、のんびり…カメさがしの醍醐味
 まずは調査した場所の地図を見てください。1,456カ所にもなりましたが、東北から北海道は数えるほど。カメは寒いところが苦手で、太平洋側は福島県より南、日本海側は新潟県より西あたりが自然の生息域だと考えられています。ならばなぜ、北海道にも発見された印が? そうなんです、そのカメたちは自分で北に向かったのでなくて、人が運んだのです。カメは昔からペット的に日本人に愛されてきた動物なので、あちこち移動させられるという特徴があるわけです。

 この「日本のカメさがし!」には、沖縄から北海道まで全国津々浦々の子どもや年配の方がのべ約3,400人も参加し、見つけたカメの写真と情報を寄せてくれました。その数8,347匹! そのうち写真で種が確認できたのは5,056匹でした(ご協力ありがとうございました)。調査期間が5月から10月までと6カ月もあったので、なかには夏休みの自由研究を兼ねて自分が住む町のカメを調べた小学生からの応募もありましたよ。

こんな大っきいの見つけたよ!

こんな大っきいの見つけたよ!

 じつはNACS-Jは、毎年テーマを変え全国の人たちに参加してもらう「自然しらべ」を開催しています。これまでに、貝がら、チョウ、川、湧水、カマキリ、セミのぬけがら、バッタなどを“さがして”きました。10年ぶりとなったカメしらべは、前回の3倍以上の参加者を得て調査を終えましたが、カメをさがしてみたい人のためにカメを見つけるコツをちょっと――①甲羅干ししているカメを探す、②そっと、じっくり近づく、③ゆっくり、のんびり待ち構える……。ということで、さがしているだけで、なんだかカメのように腹(甲羅)が据わってくる?ところが醍醐味でしょうか。

アカミミガメが6割を超えた!
 さて、いよいよ調査結果です。種がわかった5,056匹のカメのうち、なんと64%がミシシッピアカミミガメ! 赤い耳が付いているように見える、あのミシシッピ生まれの「外来種」です(写真)。続いて、クサガメ16%、ニホンイシガメ12%、ニホンスッポン4%、その他4%。日本勢3種は束になっても大劣勢で、「在来種」のカメたちが危機的状況に追いやられつつあることが、あらためてわかったのです(結果レポート)。

ミシシッピアカミミガメ(松本哲也さん撮影)

ミシシッピアカミミガメ(松本哲也さん撮影)

 なかでも日本だけにいる「固有種」のニホンイシガメは、深刻なケースが報告されています。岐阜県と三重県境を流れる揖斐川(いびがわ)では、2002年に8割を占めていたのが2010年には1割以下に激減。代わりにアカミミガメが9割近くに増え、大逆転劇が起きていました。「外来種」が「在来種」を駆逐していく典型的な状況です。なぜ、こういうことになったのか、私たち人間の側の問題を次回は考えてみます。

*2/13(木)「自然しらべ2013 日本のカメさがし!成果報告会」へ、ぜひどうぞ!

 

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保屋野初子(ほやのはつこ) プロフィール

2012年から日本自然保護協会理事。水や森林をテーマに国内外の現場取材を重ね、環境ジャーナリスト・研究者として活動。ご先祖たちが子孫を想い、つくりあげてくれた日本の景観と恵みを愛し守りたいと希って日々仕事に励んでいる。


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