イヌワシのペアの助けを借り、地元の人たちとともにリゾート開発計画から守った赤谷の森。自然と人がともに、もっと豊かになるとはどういうこと? 赤谷の森物語の最終回は、プロジェクトの中からいろいろな「森の新しい楽しみ方」を紹介し、森を“再生”していくことの豊かさを感じてもらえたらと思います。
今年10月6日、赤谷の大きな沢のひとつを歩く会がありました。15人の参加者全員が長靴をはき、沢に入り沢を伝いながら、水の中の昆虫(!)を観て、調べながら歩きました。NACS-J主催の茂倉沢の「渓流環境の復元」フィールドセミナー。じつはこの沢、4年前に一基の治山ダムを取り壊したところなのです。ダムが一つでも減ればイワナやヤマメの移動範囲は広がり、自然が少しだけ元に戻るはずですが、実際にどうなのかは調べてみないとわかりません。そこで魚の餌となる「水生昆虫」の登場。どんな種がどれだけどこに棲んでいるかは、渓流環境の状態を知るめやすとなります。
3年間にわたる専門家の調査によってわかってきたことは、ダム撤去の工事をして土砂が激しく流れて川底がひっくり返されても水生昆虫はしっかり生き残る!です。変動に「打たれ強い」水生昆虫たちは、ちゃんといてくれるということなのです(詳しくはこちらをご覧ください)
フィールド歩きは沢だけじゃありません。小出俣(おいづまた)エリアでは、スギの人工林を、100年後にたくさんの生き物がくらせる自然林に戻そうと、伐採後の光の入り具合や、親木となる広葉樹林からの距離を変えるなど、いろいろな伐採方法を試しています。そこに、広葉樹のこどもたちが育ってくるようすを、年1度見に行く機会があります。その名も「自然林復元100年モニタリング調査会」。また、あのクマタカについて知るフィールドセミナー(来る12月8日)は、すでに満員御礼となっているほどの人気です。
こんなふうに参加型の調査は、知的好奇心をくすぐるひと味違う森の遊び方って言えないでしょうか。鬱蒼(うっそう)とした森ばかりではありません。赤谷プロジェクトエリアは標高差も大きいので、山頂までハイキングすれば「お花畑」で野草の花々と出会うことができます。さわやかな風に吹かれて「みなかみ町の山弁」でも食べ、景色を味わってくる。「旧三国峠・三国街道を歩こう!」マップ現地学習会は、高原好きにはたまらないでしょう。
山登りや虫は苦手だという自然好き(?)には、みなかみ町でお茶とおやつを頂戴しながら森や生き物を話題に語らうakayaカフェはいかが。近くには温泉がいくつもありますから、山里の恵みづくしの休日が過ごせますよ。
年がら年じゅう、赤谷の森には何やかやと人が集まっています。昔、赤谷は地元の人たちの生活の森でした。その役目が減ったぶん、今はよそからも人がやって来て地元の人たちと、森づくり、森あそびを楽しむようになりました。赤谷プロジェクトは、森を“再生”する仕事をオープンにして、多くの人たちに「森の新しい楽しみ方」を知ってもらうことでもあります。赤谷の森 語ログをご覧になり、気が向いたときにふらっと、仲間と、家族と、ひとりでも、遊びに来てください。お待ちしています。