7月1日(火) ~
7月15日(火)
Water Calling – 京都をめぐる水の地図
初夏から盛夏へと移り変わるこの季節、静かに潤う水の気配とともに、私たちの暮らしに深く関わる「水」をテーマにした展示がはじまります。
デザイナーのイザベル・ダエロンさんとキュレーターの永井佳子さんによる「Water Calling」は、“本や物語、絵画や神話など、今日、芸術と呼ばれている方法を通して、いかに人々が見えないものを想像し描き、水の存在を感じてきたのか”を考えるプロジェクトです。
東を如意ヶ嶽、西に愛宕山、北に比叡山と三方を山に囲まれた京都は、豊かな地下水脈を持つ盆地。
古くから井戸水や湧き水を利用し、料理や茶の湯、染めもの、酒造りなど、文化や産業が育まれてきました。
一方で、気候変動の影響により、時に豊かな水が災禍となる現実もあります。
今回の展示では、これまでのフィールドワークや展覧会で生まれたドローイングや書籍などを通じて、私たちの足元に静かに流れ続ける「水」との関わりを改めて感じていただけたらと思います。
見えない水の流れにそっと耳を澄ませるように。
どうぞお楽しみください。
- Water Callingとは - 見えるところにも、見えないところにも豊かな水が流れる京都。川や湧き水を活用した庭園、明治時代の産業の発展を支えた琵琶湖疏水、そして日々の営みを支える井戸水。こういった風景は人間が水と共存するための技術の多様さを表しています。 平安時代に都を作った人々はこの土地が水に恵まれた場所だということを知っていました。そして限りある資源の恵みに感謝しつつ、自然の力を敬いながら生きてきたのです。その歴史には科学だけでは説明しきれない人間と自然との関わりが潜んでいます。 Water Calling はデザイナーのイザベル・ダエロンとキュレーターの永井佳子によるプロジェクトです。 見えない自然資源「水」を認識する方法としてドローイングや神話などの表現に注目し、定期的なフィールドワークと専門家による監修を通じて、「水」をテーマに考えるための場とツールを作ってきました。 2025年1月には京都・東山の無鄰菴にて展覧会を開催、京都の地下水を多角的に捉える展示を行いました。 プロジェクトに伴い制作した書籍やドローイングを通じて、見えない水の流れを感じるきっかけになれば幸いです。
イザベル・ダエロン 1983年フランス生まれ。リサーチデザイナー、ENSCI-Les Ateliers卒。 人間と自然資源が共存するシナリオを作ることをデザインの課題に、プロダクト、都市、空間デザインなど、分野を横断し、環境問題と循環、モビリティー、パブリックスペースなどを視野に入れたプロジェクトを行っている。 その他、Topique(トピック)と名付けた課題を設定することで、その解決に向けてのアイディアをかたちにしている(例えば、Topique-cielは雨の後の水たまりを鏡に見立てることで都市空間にある資源の見方を変えること、Topique-feuilles は地面に落ちた落ち葉を騒々しい屋外用掃除機で掃くのではなく風で吹いてもらうというプロジェクト)。 永井佳子 キュレーター。ロンドン大学ゴールドスミス校キュレーティング修士修了。 外資系企業にて文化事業、デザインディレクションを担当。企画の目的に即した芸術家やデザイナー、職人を引き合わせ、協働するコミュニケーションプロジェクトを多数行う。 2020年よりMateria Prima主宰。フィールドワークを軸に自然資源と文化の関係を研究するほか、分野の枠にとらわれずにクリエイティブを通じて環境と社会をつなぐ企画やコンテンツ、しくみを作っている。 建築設計事務所o+hとの共同企画「Hamacho Liberal Arts」(2020-)、雑誌 Subsequence 編集、エルメス財団編『Savoir & Faire 土』(岩波書店、2023)寄稿。京都市立芸術大学非常勤講師。 HP - instagram