さて、今は東京。六本木TSUTAYA2Fの窓辺カウンターで街を歩く人々を眺めながらコラムを書いています。よくこちらへ度々来ては日頃、山羊ミルク、チーズ、ヨーグルトなどを使っていただいているレストランやワイン店へご挨拶巡りということで、美味しい料理を堪能する毎日です。気分を変えて、離れたところから農場を想い返してみるのもいいかもしれませんね。

 

ルーラルカプリ農場ルーラルカプリ農場では山羊ミルクを生産してくれる山羊の他に、小型種のトカラヤギ、シバヤギがいます。1年を通して繁殖できるこれらの山羊ですが、生後1〜2ヶ月くらいの仔山羊が今20頭くらい居て、これらは自宅でペットとして山羊を飼いたい家庭へ売られてゆきます。もう半数くらいの仔山羊は行き先が決まりました。以前から全国より山羊を飼いたい人の問い合わせをたくさん頂きましたが、ちゃんと山羊を飼うことのできる方のみに販売してきました。山羊も生き物ですので、そんなに簡単に飼えるものではないのです。実は今までビックリするような問い合わせをたくさん受けてきました。

 

・調子が悪くなって動物病院に行ったら山羊は診られないと言われた。
・山羊飼い始めたんですけど、山羊って何食べるの?
・喜ぶからパンばかり食べさせていたら、ぐったりして動けなくなった。
・生まれて間もない仔山羊をもらってきたらぐったりして死にそう。
・思ったより大きくなったから、もう要らん。
・庭の雑草を食べさせるつもりだったのに花や植木も食べるので困る。
・毎日山羊ミルクが飲みたくて飼い始めたけど、乳が出過ぎて困る。
お出かけもしたいので放っておいても良い?
・山羊が独りになるとメエ〜メエ〜泣いて困る。

 

・・・などなど、まあひどいもんです。いちばん呆れたのは、こんな話です。だいぶ前のことですが、ある田舎暮らしをしている比較的若い夫婦が、雄山羊を連れてきました。山羊と暮らすのが夢で、飼い始めたけど大人になって体臭がキツくなり、もう飼えないから引き取って欲しいと言います。仕方がないので、うちで引き取ることにしました。そして数ヶ月後、その山羊は、うちで生まれた雄山羊や数年にわたり乳を生産する役目を果たした母山羊と一緒に沖縄に行き、山羊料理となり、家畜として最後の役目を果たしたのです。 その後、その夫婦がその雄山羊に会いに来ましたがもう居ません。事情を話すと激怒して「なんてひどいことを。可愛がっていたのに、私たちの気持ちが分かっていない!」と。山羊を捨てたのはあなたでしょ? とぼくも厳しく言いましたが理解出来ない様子。まあ確かに可愛がっていたのでしょう。それはぼくも分かるのでちゃんと話しました。後日届いたメールでもまだいろいろ言ってきましたが、もう放って置きました。

 

山羊今まで本当にたくさんの山羊を「もう飼えない」ということで引き取りましたが、出所の分からない山羊に毎日餌を与え、死ぬまでうちで飼い続ける訳にはいかないのです。世話をするのも費用も手間もかかります。いろんな方がおられます。それぞれの考え方があって当然。別にぼくと違っていてもそれは全然良いのです。でもやはり、相手を尊重すること、理解して初めて理解されること。自分と相手を離れたところから見つめてみることは大切です。そんなことでもう何年も、結構厳しく山羊を飼いたい人に面接みたいなことをして、ちゃんとした家族にだけお渡しすることにしています。苦情も全くなく、とても喜んでもらえて山羊も山羊飼いさんも幸せそうです。

 

さて、そろそろ山羊達も冬支度。とくに、乳を生産する乳用種の山羊達は12月〜5月が出産で大事な時期でもあります。お乳の量もこれから減ってきて、更に希少な命の産物を分けてもらうことになります。こういうことを通して、あらゆる食物の恵みに感謝するのです。皆さん、食事を頂くときには、食物と神様と自分の口に入るまで働いて下さった、すべての人に感謝の気持ちを持って頂きましょう!

 

 

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