プライベートな話になりますが、この夏でぼくの妻が亡くなって8年になりました。

 

お金やモノより、人を残したい当時小学6年生だった長女は、結婚して今年の2月に母になりました。4年生だった長男は高校3年生で受験生。ぼくより8センチも背が高くなりました。1年生だった末っ子の次男は中学3年生でこちらも高校受験となり、大好きなベースボールがしっかり出来そうな学校に進学することでしょう。これまで健康で逞しく、はつらつと成長し人間関係のトラブルもなく元気に育ってくれて、ぼくは本当に幸運な父親だと思います。隣に母がいてくれたことと妻や先祖が見守ってくれたこと、周りの人々のサポートに本当に感謝しています。

 

父が13年前に亡くなり、半年後に妻が病気になりました。若い夫婦にとって受け入れ難い辛さで、生活が完全に変わってしまいました。奈落の底に落ちた気分を味わいながら、何か希望を探し始めました。しばらくして視点を変えてみることにしました。命には限りがあることを痛感し、ライフスタイルを全面的に見つめ直す必要がありました。家族のこと、仕事のこと、体のこと、食物のこと、心のこと、魂のこと、地球のこと、宇宙のこと・・・それがぼくたちの新しい人生とルーラルカプリ農場の始まりでもありました。

 

妻はあきらめない人で、最期まで治ると信じて頑張りましたが、力尽きました。遺言は残しませんでしたが、子どもたちにたくさんの愛情を注ぎ、あきらめない姿を示してくれました。そしてぼくには方向性のヒントを多くもたらしてくれました。妻の身体のことを考えるうちに、自分がやるなら山羊ミルクしかないと確信しました。そして「身も心も癒される幸せな場所を作り、世の役に立ちたい」という想いを胸に闘病中に準備してきた構想は、亡くなった1年半後に「ルーラルカプリ農場」としてスタートしました。

 

その構想は、これまでコラムに書いてきたことにも散りばめられています。ここは観光としてでなく、動物たちの育つ姿やスタッフの働く姿、不完全でも普段のありのままを見てもらう場所であること。不得意なことはしない、させない。最高の山羊ミルクを搾り、美味しいチーズやヨーグルトを作る。世の中の常識や固定観念にとらわれない。正直に、シンプルに、楽しみ、余裕を持ち、自由で美しくあろうとすること、愛すること。実際にそうやってみて気づいたのは、自分たちが作るものを通して、自分がどういう人間なのか、自然と縁をいただいた人がどんな人たちなのかが重要、ということでした。

 

先日、福岡に行った時、お世話になっているシェフと話していて、彼がこんな話をしてくれました。

 

「お金よりもモノを残したい。そしてモノよりも人を残したい」

 

それはぼくのテーマで、まさにぼくに必要な言葉でした。精一杯生きていらっしゃる人の言葉には説得力があります。自分の身の回りの人の質で人生の質が変わります。外に出て行っても、このような人や言葉に接する機会が多いのは本当に有難く思います。人を残さなければ、良い場所であり続けることは出来ないし、人を残せば世界を変えるチャンスもあります。人生いつ何が起こるか分からないのです。生きている限り、まず身近な大切な人から、より大きな愛で接していきたいものです。

 

 

 

 

 

 

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