6月6日(金) ~
6月23日(月)
川又栄風 新茶展|進化する結桶
結桶は、木の器である。
それも一切の撥水加工が施されていない、
無垢の木肌をさらした
呼吸する容器である。
寿司桶、飯桶のような食卓の道具から、浴室の風呂桶、さらに背丈以上の酒樽、醤油樽、味噌樽、酢樽に至るまで、さまざまな姿をした「水」および「水を含むもの」を保有するための容器として、ここ森林国の日本に馴染み深く、生活と産業の両面でひろく使われてきた。
川又栄風は1887年、江戸の深川に創業した「桶栄」の四代目である。江戸櫃(えどびつ)といわれる食卓用の結桶の技術を受け継ぎ、今日、東京でただ一人の結桶師として、木桶づくりに精を出す。
桶栄は樹齢300年にもなる椹(サワラ)と檜(ヒノキ)だけを材料にする。それも極上の原木を自ら見極めて仕入れ、完成に至るまでの7~80の工程をすべて一人で手がけている。
結桶は、丈夫で軽い。
カーヴした鉈(なた)で側板とよばれる材料を丸太から割り込み、それを接ぎ合わせて底板をはめ、容器状にして金属の箍(たが)で締め上げる。シンプルな造りでありながら、滴りを許さない精度となめらかな肌合いが身上となる。材料と手際の良さもさることながら、用いる刃物道具の丹精が木地を通じて伝わってくる。
一木で刳り出せば、丈夫だが重たく、変形しやすく大きな桶は作れない。曲木で作れば、薄くて加工もしやすいが、保水容器としては繊細すぎる。
結桶の利点は、浸潤と乾燥を繰り返す過酷な環境に長年耐え、軽い。桶作りの技術は11世紀後半ぐらいから始まったとされる。以来、用途別に職人が分かれており、戦後までは町内ごとに欠かせない手仕事だった。当時は修理専門の職人もあり、通りを歩けば、木を削る音と匂いが漂ってきたことだろう。
桶栄は江戸時代からつづく木材流通の中心地、木場の隣町にあった。油分、水分ともに桶作りに理想的な原木を選ぶことができ、それが手に入ったことも功を奏したに違いない。特に、花柳界をはじめとする洒脱な食宴を盛り上げる美しい道具として、創業当初から桶栄が手掛ける江戸櫃は重宝されたという。
当たり前だった分業制の桶づくりは、効率的な作業を優先にして、品質へのこだわりが活かされない。原木から手がければ材料費は高く、ロスも多い。しかし、いくら手間暇がかかろうと、完成度の高い仕事のために、桶栄は一貫して原木からものづくりを考えてきたと川又さんはいう。
時代は巡り、桶は特別なものになった。
当時、竹だった箍(たが)はやがて銅に変わり、川又さんは今、洋白銀を用いている。粋で洒落た桶は、コンテナという新しい概念を与えられ、自由に羽ばたき始めている。和の食卓だけでなく、洋の食卓やワイン、花、水草、金魚までを受け容れる新しい木の姿。たっぷりと肉厚で柔らか、しっとりとした感触は、他の素材では決して味わうことができない。刃物を入れたら終わり、という素材の一回性は、作り手の鍛錬を露わにする。だからこそ、過度な表現を避けた佇まいが心を打つ。
素晴らしい木の器が届きました。
京都で初めて桶栄ー川又栄風さんの仕事をご紹介します。
からりとした東の風をぜひご堪能ください。
GALLERY TALK(参加無料、予約不要)
⒈「オモテ川又:桶栄のしごと- 結桶からYUIOKEへ」
日 時:2025年6月7日(土) 14:00-15:00
場 所:日日 gallery nichinichi
話すひと:川又栄風、奥村文絵(日日 gallery nichinichi)
⒉「ウラ川又:トウキョウ、職人、川又栄風」
日 時:2025年6月8日(日) 14:00-15:00
場 所:日日 gallery nichinichi
話すひと:川又栄風、奥村文絵(日日 gallery nichinichi)
来年、創業140周年を迎える桶栄。その四代目であり、東京にわずか一人だけとなった結桶師、川又栄風さんは、異分野とのコラボレーションを積極的に受け入れながら、生活必需品としての桶から、美意識をもった特別な道具、YUIOKEーコンテナへと発想を広げています。
本イベントでは2日連続、テーマを変えてお話を伺います。初日は「結桶、桶栄の仕事」、2日目は「職人、川又栄風」にフォーカス。大都市で生き残る木の仕事、東京、深川の職人文化、ものづくりとデザイン、そして現代の手仕事ー桶栄のものづくりについて、その表裏を余すことなくお話を伺います。
GALLERY TOUR
「呼吸する木の器 – 桶栄の桶 」
開催日:6月14日(土)、15日(日)、21日(土)、22日(日)
開催時間:14:00 – 14:30
場所:日日 gallery nichinichi
*参加無料、予約不要
*日本語、英語のバイリンガルで行います。
VIEWING ROOM
本展の作品をVIEWING ROOMでご覧いただけます。
Instagram
本展の様子や出品作品を@gallery_nichinichiでもご紹介いたします。
ZOOMでのお買い物
ギャラリーにお越しになれないお客様のために、ZOOMにて作品をご案内いたします。常設作品についてもご案内可能です。メールでご要望をお聞かせください。
川又栄風| Eifu KAWAMATA 結桶師 桶栄四代目(当代) 1961年 材木の町である東京・深川に生まれる。 1983年 立教大学 社会学部卒(武澤ゼミ)卒、スキューバダイビング部に所属。 1986年 社会人を経験の後、正式に父・栄一に師事。 2007年 桶栄四代目を継承。 2016年 桶栄創業130年を迎える。
日 時 | 2025年6月6日(金)~6月23日(月)11:00~18:00 ※定休日 火曜日 ※作家在廊日 6/6(金)~6/8(日) |
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場 所 | ギャラリー 日日 京都府京都市上京区信富町298 |
H P | https://nichinichi.com/ |
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備 考 | ※詳しくはこちらをご覧ください。 |