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12月2日(金) ~

12月22日(木)

Hideki Maekawa Solo Exhibition 古雅-平安~鎌倉時代の彫刻様式より

Kaikai-Kiki-Gallery Hideki Maekawa Solo Exhibition 古雅-平安~鎌倉時代の彫刻様式より

2022年12月2日より、カイカイキキギャラリーでは前川秀樹による個展「古雅̶平安~鎌倉時代の彫刻様式より」を開催いたします。

木工での彫刻を中心に、絵画や生活道具オブジェ、そして物語まで手がける前川秀樹。5年前からの村上隆との対話により、仏像の制作を開始し、2021年3月に開催された村上によるキュレーション展「Healing x Healing」で、初めて「普賢菩薩像」を発表しました。

仏像の制作にあたり、各地の様々な造仏を研究した前川。そこで、平安時代から鎌倉幕府に移り変わる境い目あたりの造仏文化に着目します。
平安時代中期以降、日本の東北地方などでは、都が発信する文化・様式がその地の風土と交わり、そして造仏が盛んになっていきました。前川は自身が制作する仏像について、宮廷風の様式や感覚と土着のハイブリッドから生み出された「地方仏」であると語り、当時の都的な感覚の煌びやかな雅でなく、都への純粋な憧れから作られた地方の造仏というスタンスをイメージして作っているといいます。
本展のタイトルとなる「古雅」という言葉も、いわゆる「雅」とは異なる感覚を表すものとして、タイトルに選ばれました。

作家にとってカイカイキキでの初の個展であり、仏像のシリーズのみを展示するのも初となります。
みなさまのご来廊を心よりお待ちしております。

日本の神々を彫る-村上隆

前川秀樹さんとの出会いは、15~6年前に名古屋のGallery feel art zeroというところで、ジョゼフ・コーネルへのオマージュ的な作品を購入したところから始まります。

その後、前川さんの作品を生活工芸系のストアでたまに見るようになり、その名前を少しずつ覚えていきましたが、青山のDEE’S HALLというギャラリーで、大きな展覧会が行われるということで出かけたところ、日本の戦後美術の中核である、西洋人コンプレックスを元にした、白人的なる美を元にした人体造形が沢山ありました。
その展覧会の作品の8割が、初日の昼過ぎに売切れており、日本で彫刻作品が売れるということは非常に稀なことですので、とても驚きました。
彼と話してみたいと思い、中野のHidari Zingaroでの展覧会を申し伝えたところ、快諾して頂きましたが、前川さんが僕とやりたいことは、西洋の彫刻作品の成功とはなんぞや?という問い掛けに対する答え出しでした。
僕は端的に、日本人が西洋人の造形をしたところで、どこか違っていたり、カリカチュライズが酷すぎて、外国人が作る「眼鏡に、細い目に、出っ歯」のアジア人、日本人と同じようなものになってしまうのではないか、と話したところ至極納得されて、ではどういう方向性がよいのかなぁ?と、疑問を持ったまま、お別れしました。

程なくして、彼のInstagramにおいて、広島の方のお祭りにおける、鬼の面を作ったというレポートを見た時に、僕は、これはいいなと思い、直ぐ前川さんに連絡をして「日本の神々を作ってみてはどうでしょうか?」と申し伝えたところ「少し考えてみます」と言ってくださって、それから半年位したら、1作品、象の上に座る如来の像が出来てきました。
本当に1アイデアで出来てきてしまう、前川さんの造形能力や、造形をするにあたって、彼が文脈の知見を深めるその能力に脱帽し、大変興奮した賞賛の言葉を彼に伝えました。
そうしたところ彼もそのリアクションにとても気分を良くされて、出来れば大きな会場で、大きい作品だけを12体、作りたいのだがどうだろうかということで、勿論、僕は快諾しました。そして、彼に委ねた作品展が、今回の展覧会です。

例えば、非常にトラディショナルな学習を受けた仏師が作る彫刻と、前川さんが作る彫刻では、かなりのズレがあると思います。
逆に言うと、仏師の世界の人たちからみると、批判的に写ってしまうようないい加減に見える情報の混濁や、整合性の取りきれないポージングや、指の使い方などが散見されるかもしれません。
しかし、そういったミストランスレーションみたいなものが僕自身の芸術の進化に必要な誤読と積極的に考えているので、それを敢えてしてくれる前川さんへの展覧会のオファーというのは、間違ってなかったと思っております。
一つ大きな問題があるとすると、彼が使用している木材が、乾燥している地域において大きく割れてしまうのではないかという危惧があることです。
前川さんのメインの造形は野や川、海に落ちている雑木なので、水分がまだ入っていたり、歪みがすごかったりで、完成してもその造形が動いてしまうことです。なので今回は、最初のプロトタイプを作ってもらうという感覚で、その原型をもとにして、今後、他の素材において、今一度リファインするような機会を設けたいとも思っています。

なんにせよ、前川さんが6年もの歳月をかけて作り上げた新しい日本の神々の世界を、どうか専門家の方も含めて、この展覧会で堪能していただきたいと思います。

前川さんにおいては数回会場にお越しいただいて、観客との対話をしていただきたいと思いますので、ご期待ください。

村上隆

風土という言葉が好きです。風士とはその土地の自然環境、地勢を指し人間の歴史や文化の形成、果てはそこで生まれ育った人の性質に至るまで全ての基盤を成すものですが、それは当たり前すぎて、そんな事を人が日常改めて意識することはまれだと思います。

数年前、仏像というモティーフを村上隆さんに提案されてから、各地に残る古い仏像を見て歩きました。最初は木影刻としての技法や多岐にわたる宗教彫刻としての決まり事を理解する事で手いっぱいでしたが、徐々にそれが造られた背景に興味をそそられるようになりました。日本の仏像とは海を隔てた彼方の異国から小さな島国にもたらされたいわば外来の神の姿です。それを受け入れ、時間をかけて育て醸して来たものがほかならぬ日本の風土です。奈良や京都から地方へ造物の機運が広まり、その都度その土地で拭い去ることはできない古い雨土と交配を繰り返し、複製、淘汰され進化し続けた仏像彫刻は、やがて、大陸のそれとは一味違う日本の固有種となりました。

私たちが現在観ることができる千年から数百年前の仏像のほとんどは、作者の個人名が刻まれていません。そのせいか現代に生きる私たちでさえまるで見事な紅葉を仰ぎ見るのと同じように何の違和感も抱くことなく、その詠み人しらずの”ハレの造形物”にそれぞれに想いを寄せることができます。風土とその時代に生きた人の中間に仏像は常にあります。

博物館で開催される古い仏像企画展には例外なく沢山の人が押し寄せます。そうした企画展は日本人にとっては”ハレの日”と同様の特別な機会として意識されるからかもしれませんが、文化、つまり違う風土を基盤に持つ人々の目にはその造形や特別感はどう映るのでしょう?大変興味がそそられるところです。現代でも”繋ぎ”として機能し続ける日本固有種の彫刻であることを期待して、今回12体の仏像と伝統的な祭りで使用される面を制作し提案させていただきます。
ぜひご高覧いただけたら幸いです。

前川秀樹

前川秀樹
1967年淡路島生まれ。1989年に武蔵野美術大学油絵学科を卒業し、1996年に渡仏。彫刻・絵画・生活道具などで個展、グループ展を行い、ワークショップなども多数開催。2006年ごろより、里山の伐採木を人の形に刻む「像刻」シリーズを開始し、同年よりDEE’S HALL(東京)、ギャラリーたむら(広島)にて像刻個展数回開催。著書に像刻作品集「VOMER」、物語集「Zuhre」がある。仏像の制作は5年前の村上との対話より開始した。

個展
2019 「キクナラク」DEE’S HALL(東京)
  「シャン・ノース〈An Sean-Nós〉」ギャラリーたむら(広島)
2018「花塵とみちゆき」ギャラリーたむら(広島)

■オープニングレセプション
日 時:2022年12月2日(金)18:00~20:00

■トークイベント
日 時:2022年12月3日(土)15:00~
スピーカー:前川秀樹、宮本我休、村上隆

日 時2022年12月2日(金)~12月22日(木)12:00〜18:00
場 所カイカイキキギャラリー 東京都港区元麻布2-3-30 元麻布クレストビルB1
H Phttps://gallery-kaikaikiki.com/
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