北京(2)

紫禁城(北京故宮博物院)

9月の初め、北京の中心に位置する名所「紫禁城(北京故宮博物院)」へ行きました。紫禁城の敷地面積はなんと100万平方メートルを超え、南北一直線上に、左右対称となって主要な宮殿が連続します。場内には約9,000棟の建築物が配置されており、中国では最大の建築群となっています。私は「故宮」といえば収蔵品が展示されたミュージアムをイメージしていたのですが、むしろ広大な敷地に配置された皇宮を1日かけて観て周るというイメージでした。そのうち幾つかのこじんまりとした建物内には、陶磁器、書画、時計、椅子などが建築物ごとに展示されていて、決して数は多くないけれども、いずれも質の高い収蔵品を観ることができました。実際、紫禁城の名品のほとんどは、台湾の故宮博物院に収蔵されているとのこと。ちなみに写真は、城内の南西隅に建てられた武英殿・陶磁器館で見た宋代、つまり今から1,000年前の陶器製の枕です。

1420年に建てられた紫禁城には、明朝と清朝の24人の皇帝が住んでいました。映画『ラストエンペラー』(1988)で知られる最後の皇帝・溥儀(1906-1967)が1912年に退位したことで、皇宮としての紫禁城の歴史は幕を閉じました。映画の名シーンの一つ、3歳で皇帝となった溥儀の即位式が行われ、無数の人々が幼児の溥儀に傅いていたあの場所が「太和殿」とその広場で、現存する中国の木造建築では最大のものと言われています。大和殿の中央には、皇帝が座っていた「宝座」が見えます。老人となった溥儀が、子供の頃に宝座に隠したコオロギ容れを取り出すラストシーンを覚えている方も多いのではないでしょうか。

また興味深いことに、紫禁城の建設においては「風水」が非常に重要なアイデアとなっています。例えば、東に位置する「文渊阁」。東は「水」を意味するため、水を象徴するための緑色の瓦になっていました。この建物は(「水」と反対に位置付けられる)「火」を避けるために、図書館として使用されました。

文渊阁

それから城内の各所に壺が置いてあることも気になりました。「太平壺」(日本語では「平和の壺」)と呼ばれるこの壺は消防用として、陶磁器ではなく金属で作られており、約3,000リットルの水が入っています。清の時代には城内に約300個の壺が置かれ、「宦官」という皇帝に仕たえる者たちが、夏には水を交換し、冬には水が凍らないよう壺の周囲に火を起こして、火の番をしていたそうです。

紫禁城の城内にカフェはないのですが、至るところにベンチが置いてあり、私は歩き疲れると、ラストエンペラーの音楽を聴いたり、それぞれの宮殿にまつわる解説を読んだりして過ごしました。観光客は持参したお茶を飲んだり、ひまわりの種を食べたりしていました。紫禁城へ行かれる際には、歩きやすい靴で行くことと、おやつを持って行くことがオススメです。閉館前になると、人も少なくなりタイムスリップしたような不思議な感覚になりました。ちなみに訪問の際には、事前にオンラインでの予約とパスポートの提示が必要で、1週間前には予約をすることをお勧めします。

毛纺时尚中心(海淀区、清河小英西路16号)

ある日、何か布を買いたい!という気分になり「北京毛纺时尚中心」(日本語では「北京毛織物ファッションセンター」)というテキスタイル専門のビルへ出かけました。最寄り駅から歩いて向かうと「毛纺街」(毛織物街)という標識が立っており、このエリアがもともと羊毛などの毛織物工場地帯として栄えていた名残が感じられました。清河と呼ばれるこのエリアは、かつて北京最大の毛織物工場地帯であり、ウールやツイードの製品を生産していたそうです。

1994年に設立の「北京毛纺时尚中心」には、生地、糸、既製服、オーダーメイドなどテキスタイルにまつわる、およそ30店舗が5階建てのビルにひしめき合っていました。古いビルの小さな店内に所狭しと置かれている布や糸に囲まれて裁縫をしている店主や、隣の店舗の方とお喋りをしている方の姿から90年代の中国の雰囲気を少しだけ味わうことができたかもしれません。チャイナドレス(旗袍)専門店では、映画『花様年華』(2000)のヒロインを彷彿させる素敵なドレスが並び、婚礼衣装を見に来たカップルもいました。私はお目当てのものが見つからず、何も購入しなかったのですが、午後のウィンドーショッピングを楽しむことができました。ただ残念なことに、ファッション市場の変化などにより、「北京毛纺时尚中心」は年内をもって閉鎖するとのことでした。

北京ダック 聚宝屯烤鸭店(巨山村北排洪沟南侧)

中国で食べた初めての北京ダック。北京の西に位置する「中間美術館」に行った帰り、近くで北京ダックを食べようということになり、アプリ(大众点评)で探して出てきたお店が「聚宝屯烤鸭店」でした。北京ダックはお店によって当り外れがあると言われていて、美味しい北京ダックを食べるのは中国の方でも難しいそうです。こちらのお店は地元の方が多く、とってもリーズナブルなレストランでした。北京ダック半羽+千切りした胡瓜・ネギ・メロン、ソース(甜麺醤)、北京ダックを包む薄い皮(薄餅)がセットで2,000円。前回ご紹介した廈門で食べた鴨(姜母鴨)よりは新鮮ではなかったけれど、薄皮がもちもちしていて美味しかったです。そしてこの後、鴨を切り分けた後に残った骨を使った
スープをいただき、大満足でした。