8月の終わり、中国に移住してから2回目の引越し。行き先は首都・北京です。これまでは中国の南の都市を巡ってきましたが、今回は初めて北の方へ。景徳鎮の友人たちには「北京はすごく乾燥している」「ずっと空が曇ってて、とにかく空気が悪い」「なんでも高くて生活が大変」「北京の人はなんだか冷たい」と、何度も何度も念を押され、一体どんなところなのかとドキドキして向かいました・・・。
寝台列車の方が飛行機より安いうえ、前から興味もあったため、景徳鎮から北京へは8時間の列車の旅となりました。列車内はレトロなデザインが可愛らしく、リネンやベットサイドのテーブルクロスに施された刺繍やカーテンのレースも素敵でした。深夜に売店でおつまみを買って立ち飲みした後、4人部屋のシングルサイズのベットで揺られながら眠りに就きました。私とパートナーで4人部屋のベットの上下を取りましたが、向かいのベッドとの距離がすごく近いので、2人分のベットは上段を二つか、下段を二つのを取る方がベター。ちなみに上段は下段より800円ほど安いです。
朝9時頃に北京に到着すると、灼熱(暑い日は40度)の景徳鎮からぐんと涼しくなり、初秋の気持ちの良い気候に少し感動しました。北京の緯度は、日本の秋田と同じくらい。8月末から9月の北京は、1週間に2~3回ほど一時的な雨が降り、湿度も保たれ、連日青空が続きました。北京に長く暮らす人によると「北京はいま1年で最も美しい季節。でも冬はすごく寒いから分厚いコートを準備してね!」とのこと。やはり北京に行くには秋がおすすめかもしれません。
引っ越して最初の1ヶ月は「自公寓」という月単位で借りられるアパートに住みました。アパートの管理人のおじさんはアキ・カウリスマキの映画に出て来そうな無愛想な方でしたが、すぐに慣れて毎日挨拶する仲になり、おじさんの飼っている猫も可愛くて、良い滞在となりました。
北京には中央美術学院や清華大学美術学院といった有名な美術大学があり、洗練された展覧会や面白いアーティストたちと出会えることも魅力です。北京でアートを観に行くと言えば、798(チージョーバー)です。「798」と呼ばれる旧国営工場跡の敷地に、ギャラリーやアートスペース、カフェやレストランが集合しています。ちなみに、景徳鎮では740(チースーリン)という同じく旧国営工場跡がアートスポットになっていました。地元のアーティストたちによると、798は既に商業化しすぎているという批判もありますが、アートブックが充実する「北京徳国文化中心」や、時々ユニークなワークショップを開催する「山中天芸術中心」など、目星をつけて行くことがポイントです。
北京はどこを歩いても街路樹の緑が溢れ、なかでも柳は見事な美しさ。天気の良い日は、北京特有の細い路地を意味する「胡同」(フートン)を歩くことがおすすめです。故宮(紫禁城)を中心に都市が形成された北京では、中心部へ近づくほど、胡同に面した「四合院」(スーゴンイ)と呼ばれる伝統的な家屋群が目立ちます。これらの家屋では「老北京」と呼ばれる昔から北京で暮らしていた人々がごく普通に生活してます。経済の中心地として色気のある上海や、高層ビルが林立する杭州や深圳とは異なり、北京はゆるやかに発展しながらも、古き良き街並みを大切にしています。20世紀の北京を舞台にした映画「さらば、わが愛」や、1990年代の北京を舞台にした映画「キープ・クール」といった、私の大好きな中国映画を彷彿させる古い街並みがそのまま残っているのです。
北京ダックも有名ですが、中国の北の地方では、とにかく美味しいラムが食べられます。北京の老舗スーパー「物美」にて、100g50円程で買った新鮮なラムで作るイスラム風の炊き込みご飯は、人生でトップレベルの美食でした。
9月中旬に中国の人々が大好きな中秋節をお祝いしようと、大きな赤提灯が目印、地元の涮羊肉(ラムのしゃぶしゃぶ)のレストラン「羊大爷涮肉」へ行きました。おすすめされたラムの肩肉ともも肉、野菜、豆腐などを注文すると早速、鍋底に炭火が入った銅鍋にクラシックなスープが入って運ばれます。紅生姜のようなソースで「羊」としたためられたごまだれ(マージャン)を付け、しゃぶしゃぶのようにいただきます。ラムを食べて代謝が良くなり少し汗をかきながら、コレを冬に食べたら一段と美味しいんだろうなと思いつついただきました。お会計は2人で2,800円程。(安い・・・!)