
神奈川県の葉山御用邸にほど近い、住宅街の真ん中にある小さな神社を会場にした「森山神社土曜朝市」は、モノを介したヒトとの交流という、昔ながらの朝市風景を垣間見ることができる素敵なイチです。
朝市を始めるきっかけは、地元で大きなイベントが開催された際、有志から「もう少し気軽で地域に密着したものができたらいいね」という声が上がったことでした。そして、森山神社境内の毎週土曜日の使用許可を1年分申請し、それから「さあ何をやろう?」と話し合ったそうです。しかし、「目的を持って来場するイベントというより、ふと思い立ってふらりと寄りたくなる朝市がいいね」というアイデアが出るまでに、そう時間はかかりませんでした。そして、2011年3月末から「森山神社土曜朝市」がスタート! 出店資格は、境内の清掃や敷地内にある公民館のメンテナンスにも積極的に関わる気持ちがあること。みんなの神社を大切に守っていくため、メンバー全員が支える地域密着型のイチへと育てられてきました。
到着したら、まずは神社にお参り。朝市は、9:30頃からゆるりと始まっています。主な出店者には、自家焙煎珈琲の「THE FIVE BEANS(ザ・ファイブビーンズ)」、自家製酵母のパンの「Tette.(テッテ)」自然栽培野菜の「yum-yum veggie(ヤムヤムヴェジ)」、瓶詰めフルーツの「hasu-kumo(はす-くも)」をはじめとする食品類や、オリジナル手ぬぐい工房の「手ぬぐい・りんりん」、古道具の「wakka(ワッカ)」、オーガニックな生活雑貨 の「lepas manis(レパスマニス)」をはじめとする雑貨系のお店など、地元でものづくりをしている方々が多数関わっていらっしゃいます。
朝市の一角で「ぐるぐるマーケット」という、ちょっと変わった看板を発見! これは、「自分は使わないけど、誰かにとっては必要なものかも?」と思うものを持ち寄る、リユースのコーナー。進物品のタオルセットから子どもが成長して使わなくなったベビーカーまで、集まる品は多種多様だそうです。世話役の皆さんとお話しさせていただいた中で、朝市を運営していくキーワードとして、「開きつつ守る」とおっしゃっていたのが印象的だったのですが、その通りに、参加者や来場者に広く門戸を開きつつも、まず地元のつながりを大切にするという、朝市の原点がいたるところに生きているなあと感じました。普段は忙しい地元の方も、朝市に行けばご近所の誰かに会える、そんな楽しみな時間でもあるそうで、「じゃ今度の朝市でね」という挨拶も日常的なのだとか。自分が暮らす街にそんな朝市があるなんて、本当にうらやましい!
今回は、3月、4月と月に一度のペースで伺いましたが、3月にはまだ寒々しかった境内の木々が、4月には眩しいほどの美しい新緑に移り変わっていました。お買い物やお店の方との会話はもちろんですが、ドーナツと淹れたての珈琲を手に、神社の階段脇にある石段に腰掛けて、朝市の風景を上から眺める時間が、なんだかとても心地の良いひとときで、自分だけのお気に入りの場所を見つけられたような気分になりました。
また、現在開催中の葉山芸術祭の一環で、森山神社では5月11日(土)12日(日)「青空アート市」が開催されます。いつもの朝市とはまた違ったにぎやかなイチで、各日90組以上のクラフト系やフード系の作り手さん(出店者一覧)が集まるそうです。こちらも楽しみ! でもまずは、いつものゆるっとした朝市をぜひ体感していただきたいと思います。 今週末5月4日(土)の朝市では、こどもの日を前に、子どもたちが店長を任されるお店も出現するそうですよ。
注染という昔ながらの染色技法で、使い心地の良い手ぬぐいづくりをされている「手ぬぐい・りんりん」さんの作品。一目惚れしたのは、砂浜を歩く、裸足・ビーサン・下駄・犬の足跡があしらわれた手ぬぐいです。これは、砂浜を散歩している時にひらめいた図案だそうで、波打ち際と平行に進む下駄の足跡が、途中で海の方を向いて夕日を眺める……そんな粋な演出も、海が身近にある葉山で創作されている方ならではの発想!使っていくうちにいい風合いになっていくことを「手ぬぐいを育てる」と表現され、「育っていく手ぬぐいを見せに来てくださいね」なんてやり取りも楽しかったです。大事に育てなきゃ!*砂浜縞手ぬぐい(1,200円・朝市特別価格)