朝市。それは、ずっとずっと昔から行われてきた、生産者と消費者を直接つなぐ友好的なマーケット。ここ数年、週末には大小合わせてたくさんの市が立ち上がり、各地で人気を博しています。中でも、主宰、参加者、来場者が一体となって場をつくり、雰囲気を盛り上げて、皆が楽しんでいるものが増えたなあと感じます。そんな朝市や週末市にすっかり魅了された私。各所へ足を運ぶたびにどんどん愛着が増し、いつしか愛を込めて「イチ」と呼ぶようになりました。

きっかけは、数年前に取材で訪れた勝浦の朝市でした。400年も続く伝統的な朝市には派手さも洒落っ気もなし。ただそこには、売ること、買うこと、会話することが、しみじみ楽しいって思える時間がありました。トマトだけを売っている、切り株のような椅子に腰掛けた小さなおばあちゃん。早朝もぎたてのトマトは、不ぞろいだけど太陽のような味、つまり元気がもらえる味がしました。「ごめんねえ、不格好だけど」というおばあちゃんに、「とんでもない!おいしいものをありがとう!」、そう自然と言葉が口をついて出ていました。

それ以来、イチを探して、まずは首都圏を東へ西へ。気づけば1年で40カ所以上を訪ね歩いてました。いつしか「イチをめぐる楽しさを、伝える側に回りたい」と、中でも興味のあった「食」にテーマを絞ったイチを主宰し始めたのです。2010年からイチ・ディレクターと称しての活動を開始。昨年は、浅草にある撮影スタジオ、ライオンビルをまるごと使った「おいしい週末ライオン市」を立ち上げ、昨秋までで計3回開催してきました。

魅力的だなと感じるイチを訪れて思ったのは、“三方良し”が溢れているなということでした。三方良しとは、近江商人の心得「売り手良し、買い手良し、世間良し」の精神です。「儲ければいい」「安く買えればいい」のではなく、「売ってよかった」「買ってよかった」そして、地域や社会に貢献するように「開催してよかった」「ここで開催されててよかった」、つまりeverybody happy ! なのです。気になるイチの主宰者は、地域の活性やつくり手同士をつなげる役割を果たすなど、まさに「世間良し」の一端を担っていると感じました。私が自らイチを主宰するに至ったのも、「小さくても良い仕事をしているつくり手さんや送り手さん(いい物を自ら探し出し、伝える役割をしている人をこう呼んでいます)とともに、三方良しの一端を担えれば」と思ったからかもしれません。

イチの楽しさは、その場だけでは終わりません。仲間と出かけたなら、帰り道にランチやお茶をしながらイチ話で盛り上がったり、購入品があれば家に帰ってからもまだまだイチの余韻を楽しめる、そんなオマケまでついてきます。自分にとっての「めっけもん」がひとつでもあれば、さらに満足度も高まります。もちろん、ひとりでふらりと訪れるのもおすすめです。ぜひ参加者の方々との会話も楽しんでください。

次回から、そんなお出かけ甲斐のある朝市や週末市、ステキなイチをご紹介していきます。どうぞお楽しみに!


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イチinfo

おいしい週末ライオン市

開催予定
次回未定
会場
浅草・ライオンビルディング
東京都台東区雷門2-11-10
アクセス
東京メトロ銀座線・都営浅草線 浅草駅下車
徒歩約3分
URL
http://oishiilion.exblog.jp/

たまごかけごはん

前回のライオン市vol.3では、ごはんのエキスパート「ごはん同盟」さんによる、新米の季節においしいごはんの食べ方提案が大好評。中でも人気だったのがこれ! 「徳島からお取り寄せの特上卵+全国厳選の醤油5種(お好みの醤油をかけて)+炊きたて新米」(¥1,000)という最強コラボ。シンプルだからこそ引き立つ、各素材の存在感に開眼した逸品でした。