冬のオイシイモノといえば、蟹、牡蠣、鱈、鮟鱇など海の幸が思い浮かびますが、山の幸であるジビエも忘れてはいけません。
加賀市大聖寺では300年前の江戸時代から続く伝統的な坂網猟が今でも行われています。
江戸時代、大聖寺藩の村田源右衛門が飛び立とうとしている鴨をめがけて網を投げたところ、偶然にも鴨が網に入ったことが坂網猟の始まりとされており、片野鴨池近くの丘(坂場)で鴨の猟を行うので坂網猟と呼ばれています。
Y字型になった網の大きさは全長3.5m、Y字型の先端の幅は1.8mほどもあるのですが、鴨をめがけて10mほど投げるので重さは800gととても軽くできています。
そして、鴨が網にかかると竿の部分が外れ、網が鴨を包み込むような仕組みになっています。話を聞く分には簡単そうに思えるのですが、試練も多く坂網猟の猟師になるには並々ならぬ努力が必要なのだとか。
そんな坂網猟で仕留められた野生の鴨を食すために加賀市大聖寺にある坂網鴨認定店【料亭 山ぎし】を訪れ、鴨のフルコースを味わいました。
まず、鴨ロース肉の色鮮やかな赤色にビックリしました。坂網猟の良いところは、網に鴨がかかった後は周りの松の枝などにひっかかり衝撃が抑えられるため鴨が無傷であるというところです。そのため血が肉に回らないので色も色鮮やかなのです。
鴨肉に小麦粉をつけお鍋のなかへ。鴨の骨からとった醤油ベースのお出汁で頂くじぶすきは、金沢の伝統料理である治部煮を鍋にしたものです。ロース肉はあまり火を通しすぎないのがポイントです。驚くほどの柔らかい肉質、肉と脂のバランスも良く、野性独特の旨味が広がります。鴨の軟骨が入ったつくねはコリコリとした歯ごたえも楽しめます。
坂網猟は夕方に行われます。それは鴨は昼間はエサを食べず、エサを求めに水田へと移動する時に捕獲するので、鴨の胃の中は空っぽ状態です。ですから内臓から腐りがなく、臭みもでないのです。
鴨の肝、ロース、刺身、酢の物、串焼き、そして最後には釜めしにまで鴨と、いろいろな食べ方で鴨を堪能できました。
坂網猟は11月15日~2月15日までの3ケ月と決められており、年間200羽前後しか捕獲が出ない貴重なものです。【料亭 山ぎし】では4月ごろまでこの鴨を味わえますので300年以上も愛されている坂網鴨をぜひご賞味ください。