石川県には酒販店の有志が集まってつくる「いしかわリキュール研究会」というグループがあります。年々減少していく酒蔵や酒販店。そして日本国内においてのアルコール消費量の低迷や日本酒離れが叫ばれるなか、活動を通しアルコール消費量の向上と日本酒に興味を持ってもらおうと立ち上がったグループです。

じわもんのお酒いしかわリキュール研究会のテーマは、【地元の食材(じわもん)でとびきりおいしいリキュールを造る!】です。今年の1月に、その第1弾として『加賀の紅茶のお酒』が発売されました。日本各地で和紅茶ブームが起きていますが、石川県でも和紅茶は栽培されています。加賀市の打越地区は県内一のお茶の産地で、そこで栽培された二番茶・三番茶を原料にし、いしかわリキュール研究会のメンバーでもある、やちや酒造により製造されました。やちや酒造と言えば、金沢では400年近く続く酒造会社で、前田利家公が金沢に入城するときにお供として金沢に移り住み、酒造りを始めたという歴史があります。そんなやちや酒造の看板酒でもある清酒『加賀鶴』に茶葉を漬け込み糖を加えて造られた紅茶のリキュールです。こちらは若い女性だけでなく、紅茶好きのマダムにも大人気であっという間に完売となりました。

加賀の紅ほっぺのお酒そして、この7月に第2弾として『加賀の紅ほっぺのお酒』が新発売となりました。
「加賀フルーツランド」で栽培されたイチゴ・「紅ほっぺ」を、清酒「加賀鶴」に漬け込み、エキスを抽出し、糖とレモン果汁を加えて作られたリキュールです。アルコール度数は10%ですが、まるでイチゴジャムを食べているかのような濃厚さと、甘酸っぱい香りについつい飲み過ぎてしまいそうになります。「日本酒はちょっと。」という方でも、「これが日本酒で出来ているの?」とビックリする味わいになっています。そして、清酒漬けになったイチゴの副産物は、ジェラートとして加工され『イチゴのお酒のシャーベット』として生まれ変わりました。こちらは、エキスを抽出された後のイチゴにもかかわらず、イチゴのお酒のシャーベット驚くほどイチゴの味や風味も残っていてあっさりとしていて美味しく仕上がっています。またこの日は、6月に収穫された一番茶を使って作られた『加賀の紅茶のお酒・初夏の紅茶』も同時発売されました。新芽はとても柔らかく、甘くて香りがよいのが特徴。そんな一番茶を使って作られたのですから美味しくないはずがなく、発売前から予約が殺到という人気ぶりです。

第3弾には、金沢三文豪の一人、室生犀星ゆかりの杏がリキュールになって誕生します。室生犀星が幼少期に過ごした雨宝院の古木に実った杏で、その古木は代表作『杏っ子』などにも登場していて、樹齢は約120年。毎年花を咲かせて実も付けているそうですが、古木のため収穫量が少ないので、大変貴重なお酒となるそうです。次はどんなお酒が誕生するのか楽しみがまた増えました。

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山根ひとみ
石川県金沢市在住。
日本フードアナリスト協会東京本部・北信越支部広報委員。
実家が農家ということもあり、農家さんの思いを形にしたいと、6次産業化や農商工連携アドバイザーを務める。フードアナリストとして石川の食を発信中。趣味は食べ歩き。