奈加川日本には昔から、野菜や果物などの食材を長期保存するための方法がいくつもあります。塩漬け、酢漬け、味噌漬け、糀漬け、粕漬けなど今でも口にする機会が多いものは皆さんもよくご存知だと思いますが、砂糖漬けや蜜漬けといった保存法もあるのです! 

江戸時代に確立されたこの保存法は、金沢でも藩政期から用いられていました。そしてその保存法で作られた野菜の蜜菓子がひそかなブームになっているのです。

金沢市東山の【奈加川】を訪ねました。こちらは日本でも数少ない野菜を使った蜜菓子の専門店です。蜜菓子とは糖みつ漬けにしたもののことです。「石川県の美味しい野菜(加賀野菜・能登野菜)をたくさんの方に知ってもらいたい!そして昔からある保存方法も後世に伝えたい!」と、【奈加川】の和菓子職人とパティシエが試行錯誤の末に出来上がったのがこの蜜菓子です。

奈加川農家が丹精込めて作った四季折々の旬の野菜を使っているので、葉物野菜もあれば、根菜類、果物、そして山菜といったものまで、バラエティー豊かです。

レモンやイチジク、リンゴなどの果物はなんとなく味の想像もつきますが、加賀野菜である、源助だいこんや、打木赤皮甘栗かぼちゃ、加賀れんこんなど、蜜菓子にするとどんな味になるんだろう?と、好奇心も膨らみます。また、変わったものでは、能登のミニトマト、とうもろこしや牛蒡などにも興味深々です。

水と砂糖と野菜だけで作る蜜菓子は、野菜の味と水分バランスを取るのが難しく、野菜ごとに蜜の種類や濃度、温度を変えたり、浸透圧をかけ薄い蜜から濃い蜜へと漬け込み、その工程は7日~10日もかかるそうです。その分野菜本来のおいしさが味わえ、着色料や保存料は一切使っていないので、野菜が持つそのままの色も楽しめます。

奈加川蜜漬け、砂糖漬け、その字だけを見ると「甘そう」というイメージが先行してしまいがちですが、食べてみるとビックリするぐらい野菜の味がして、甘さが気にならないのです。
野菜の水分もしっかりと残っています。不思議な感覚のする蜜菓子に驚くばかりです。

お子さんのおやつや、おばあちゃま達のお茶請け、そしてワインのおつまみにしても合うので、いろいろなシーンで蜜菓子を楽しめそうです。

オイシイモノ紀行 山根ひとみ

奈加川
 
石川県金沢市東山1丁目1-15
Tel&Fax:076-254-1158
営業時間:10:00~17:00頃
定休日:毎週火曜日(祝日の場合は営業)

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山根ひとみ
石川県金沢市在住。
日本フードアナリスト協会東京本部・北信越支部広報委員。
実家が農家ということもあり、農家さんの思いを形にしたいと、6次産業化や農商工連携アドバイザーを務める。フードアナリストとして石川の食を発信中。趣味は食べ歩き。