田園地帯の真ん中にひっそり静かにたたずむ木の家。控えめの看板に、石畳のエントランス。存在感のある重い木のドアを開けると、気持ちいいということを理屈抜きで感じられる、のびやかな空間が広がる。白と焦げ茶の木、薪ストーブ、部屋中に広がるバターの香り。

オーナーの高橋尚邦さんは、会社勤めを辞め、料理の勉強をした後、益子のカフェ「スターネット」で働き始める。ここでの経験から、美味しいものを提供する「レストラン」にとどまらず、器や、家具など暮らし方まで提案する「カフェ」をつくりたいと心が決まり、独立して8年。少しずつ、自分の理想の店ができあがってきた。「料理も何もかも決め過ぎない方がいい」と高橋さんは言う。メニューありきで材料を求めるのではなく、その時に出会った旬のものを美味しくいただける料理をつくる。家づくりも同じ。仕事場でもあり住居でもあるmikumariの階段や梁に使われている古材は、ちょうど求めていたタイミングでやってきた。そんな偶然の出会いから、すべてがしっくりと馴染んで心からくつろぎを感じられる空気が生まれた。

奥様と、3人の子供たちと一緒に、暮らしも、趣味も仕事もすべて同じ場所で行われるのが心地よいという高橋さん。いまは庭づくりに夢中だそうだ。水分と書いて「みくまり」。恵みを分け与える、分かち合う場所という意味だそうだ。ゆっくりといろんなものを吸収し、訪れる人にその豊かな恵みを与えながら素敵に進化し続ける、この店にぴったりの名前だと思った。