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六本木の路地裏に土壁に囲まれた、全国各地の農家からの旬の食材が食べられるレストラン「六本木農園」が開店して3年目になる。古い建物を改築して、農の原点である土で内部を塗りくるみ、版築(はんちく)、アドべ(日干し煉瓦)、土のカキオトシなどのさまざまな土壁が見られる。施工は左官の久住有生(くすみ なおき)さんの指導の下、ワークショップ形式で行われた。

沖縄の赤土など、さまざまな土を用い版築で仕上げた壁

東京のど真ん中、六本木にある「六本木農園」

小林澄夫さんに聞く

Q さまざまな土が綺麗にボーダー模様になっていて、かつカーブしていますが、外側から削ったり接着剤なども使わずに、こんなきれいな層になるんですか?
造りたい形に添って枠をつくり、色の違う粘土状の湿った土を入れて、一層一層上からトントンと棒でたたきしめ、一つ突き固めたら、またその上に・・・と重ねていくので形も枠さえできれば自由ですし、上と下の土は混ざることはないですね。
Q 日干し煉瓦と、焼いた煉瓦との違いはなんですか?
色と硬さが違いますね。焼いた煉瓦はご存じのように、自然の土の色は赤やねずみ色に変化します。焼かないで乾かしてつくる日干し煉瓦は、こういう風に飾りで使う場合にも、やさしい土の色が残っていて自然な暖かみがあります。実際、日干し煉瓦の建物は通気性もよく夏は涼しく冬は暖かいのです。ただ、湿気に弱く、焼いた煉瓦ほど強度がないのが弱点です。

■版築と日干し煉瓦
版築(はんちく、あるいはばんちく)は、中国で始まった城壁や建築の基壇(きだん:敷地面より一段高くつくった建物の基礎のこと)をつくる技法で、土を固くたたきしめたもの。日本では法隆寺の土塀が知られる。日本での土塀の工法には、仮枠を立て、その中に土をたたきしめた版築と、泥を粘土状に固めて日に干したブロックを積んだものが見られる。そのほか多いのは練塀といって、生乾きの泥で石や瓦を積んだもの。

 

[左]奈良法隆寺の版築土塀 [右]版築土塀の表情

[左]奈良法隆寺の版築土塀 [右]版築土塀の表情

[左]泥小屋の版築のかたわれ(奈良山辺の道)[右]日干し煉瓦の土塀(奈良斑鳩)

[左]泥小屋の版築のかたわれ(奈良山辺の道)[右]日干し煉瓦の土塀(奈良斑鳩)

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